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Brand Design カレンダーづくりは、1人のクリエイターとしてのチャレンジの場

資生堂2015年カレンダー 資生堂2015年カレンダー
資生堂2015年カレンダー 資生堂2015年カレンダー
資生堂2015年カレンダー 資生堂2015年カレンダー

Comment

外部のアーティストとのコラボレーションで生まれた「ワンダー」

―資生堂では毎年カレンダーを制作していますが、金澤さんが手がけられた2015年の新作は、大胆なペーパーアートが目を引くデザインですね。

金澤:制作の依頼は2013年末頃に受け、せっかくだからCDやAD、撮影といったすべての役割を自分一人でやってみたいと思いました。とはいえ、毎年モデルを起用したカレンダーを発行しているわけですから、ただモデルを美しく写すだけでは物足りない。そこで、造形作家の菊地絢女さんの力を借りることにしたんです。菊地さんとは、2013年に渋谷ヒカリエの「ユリカナ展」でもご一緒しました。ユリカナ展では、彼女が切り絵や紙立体でモデルの衣装を作り、それを私が撮影するという形で作品制作をともにしたのですが、その展覧会は幅広い層からとても大きな反響があり、写真をよく知るベテランの方にも好評でした。そこで、今回のカレンダーでそれを発展させてみたいと思ったんです。

―どのような発展だったのでしょう?

金澤:ユリカナ展では、菊地さんにはモデルの衣装を中心に作っていただきましたが、今回はペーパーアートとしての表現をより際立たせたものにしたいと思っていました。制作の手順としては、まず、カレンダーの12カ月分のモチーフを考えるところから始めましたね。たとえば5月は新芽が伸びる様子、8月は南国の極彩色の鳥、3月は卒業式を迎えて女性が一歩大人になる様子......。その月ごとの色や大まかなイメージを私が考えて、菊地さんに伝えました。そこからは菊地さんに託して、自由に創作してもらいましたが、結果として驚きのある作品が仕上がってきて! 特に、3月のカレンダーに起用した、大胆な口紅のドレスは発想がお見事。そのペーパーアートの作品を私が撮影するにあたって、しっかりとそれが立体物だと伝わるようにしたり、「どうしてこんな服を着ることができるんだろう?」と不思議に感じてもらえたりするように工夫を重ねました。

―水原希子さん、蛯原友里さん、武井咲さんらがカレンダーのモデルとして参加されていますが、撮影時にはどういう演出を行ったのでしょうか?

金澤:今回は、撮影後にペーパーアートの制作を始めたので、衣装がない中で撮影を行いました。普段、モデルの方々は着用する洋服からポージングなどのイメージを膨らませると思いますが、今回はペーパーアートとコラボレーションしてカレンダーにおさまったときの自分の姿を想像しながら、撮影に臨んでくれましたね。この作品においては実写真の持つリアリティーと、ペーパーアートが引き出すワンダーの関係が最も重要ではないかと思っています。

資生堂2015年卓上カレンダー 3月 資生堂2015年卓上カレンダー 3月

実際のカレンダーに使用されたペーパーアート 実際のカレンダーに使用されたペーパーアート

企業人である前に、クリエイターとしての芯をもっていたい

―カレンダー制作は、商品広告と違ってターゲット設定も難しいのでは?

金澤:届けたい対象を「すべての年代の女性へ」と広げてしまうとものづくりが曖昧になりがちだという自戒は込めつつも、一方で「美」や「華やかさ」は女性共通の感覚だとも思います。なので、まずカレンダーを飾った瞬間に、家の中がぱっと華やぐような印象を与えたいと考えていました。それに、女性に限らずとも、「良いもの」の判断基準は多くの人に共通するのではないでしょうか。その「良いもの」を見極めるには、自分一人の確信が必要になります。クリエイティブの芯がぶれてしまうと伝わりませんからね。

―作品としても、ご自身のクリエイターとしての「芯」も大切にしていらっしゃるんですね。

金澤:そうですね。企業人である前に、「一人の写真家として何ができるのか?」という問いを自分の中にもつようにしています。冒頭で「せっかくの機会だから自分で全部やろうと思った」と言いましたが、もともと写真家というのは、自己完結型なんですよね。しかし、企業のなかでは業務範囲が細かく分かれている。だから普段ではなかなかできないことをやりたいと思ったのです。今回のような自由度の高い仕事を任されると、改めて自分がものをつくる立場にあることを振り返るいい機会になりますし、自らを高めたいという気持ちから、競争力も湧いてきます。このカレンダーでは、日本印刷産業連合会主催の『全国カレンダー展』において金賞をいただいたんです。これはとても嬉しいことでした。

―今後もアーティストとのコラボレーションのようなことは考えていらっしゃいますか?

金澤:いま言ったように自分一人で完結するのが好きなのですが(笑)、菊池さんとの二人作業では意見を率直に言い合えるので、何かとジャッジが早くて良かったですね。以前菊地さんとの仕事が社内で評価されたときは、もっと外部のアーティストのパワーを資生堂に取り入れ、新たな化学反応を起こしていくと良いのでは? といった声があった時期でした。アーティストの現代的な感性を受け取りながら、1+1が無限大に広がるようなコラボレーションも探っていきたいと思います。

掲載日 2015年3月
金澤 正人
Profile
金澤 正人(かなざわ まさと) Photographer
資生堂宣伝・デザイン部フォトグラファー。1988年(株)資生堂に入社。 以後、同社の広告写真を数多く手掛ける。 (社)日本広告写真家協会会員。 2011年個展『darkness and brightness』をキャノンギャラリーにて開催。2013年『ユリカナ展』を渋谷ヒカリエにて開催。
Credit
CD/AD/PH
金澤 正人
D
近藤 香織
C
近森 未来
P
渡辺 桂子
Links

クレジット表記について
  • CD: クリエイティブディレクター
  • AD: アートディレクター
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  • C: コピーライター
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クレジットは資生堂 宣伝・デザイン部のスタッフのみの掲載としております。

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