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Package Design 年にたった一度の非売品&限定デザイン。創立記念菓子パッケージに込められた想い

歴代の創立記念菓子 歴代の創立記念菓子

Comment

各々が考える「資生堂らしさ」をデザインに。創立記念菓子の面白さ

--資生堂では毎年4月8日の創立記念日に、全社員に向けて資生堂パーラーの特製お菓子が贈られるそうですね。

近藤:毎年デザインの異なるパッケージにお菓子が入っていて、社長からのメッセージが添えられています。30年以上前にはじまったもので、これまでに何人ものデザイナーが、企業の創立に想いを馳せながらデザインを手がけてきました。

--近藤さんは2009年、2010年、2016年に、そして村岡さんは今年初めて、この創立記念菓子のパッケージデザインを担当されたそうですね。

村岡:はい。社内コンペで担当デザイナーを決めるのですが、2度目で初めて自分のデザインが採用されました。

近藤:2013年から、若手から中堅どころの数名が指名され、提出されたデザインから1案が選ばれるようになったんです。

--社内向け菓子のパッケージということで、化粧品や一般販売のお菓子のパッケージと比較して、デザインの自由度は高いものなのでしょうか?

近藤:たしかに、比較的自由にデザインできる感覚が強いですね。とはいえ、制約は「ないようである」という表現が正しいかもしれません。資生堂の歴史的な背景や「らしさ」が大切になるので、デザイナーは「資生堂らしさ」をそれぞれの方法で解釈しながら、自分のデザインに落とし込んでいると思います。

村岡:社長が発表するメッセージやテーマをもとにデザインすることもありますね。2018年のテーマは「翔(かける)」。その言葉の要素を噛み砕いて、デザインに展開していきました。テーマがはっきりしているぶん、やりやすさも感じましたね。

歴代の記念菓子のパッケージを保管してある「資生堂 企業資料館」(静岡県掛川市)で、デザイナーの村岡氏(写真左)、近藤氏(同右)に話を聞いた歴代の記念菓子のパッケージを保管してある「資生堂 企業資料館」(静岡県掛川市)で、デザイナーの村岡氏(写真左)、近藤氏(同右)に話を聞いた

近藤氏が手がけた2010年(上)、2016年度(下)のパッケージ近藤氏が手がけた2010年(上)、2016年度(下)のパッケージ

村岡氏が手がけた2018年度のパッケージ村岡氏が手がけた2018年度のパッケージ

気持ち華やぐカラフルなパッケージ気持ち華やぐカラフルなパッケージ

近年は海外のスタッフ向けに、パッケージのデザインに合わせたお皿も制作している 近年は海外のスタッフ向けに、パッケージのデザインに合わせたお皿も制作している

日本国内、世界各地の社員や家族に。気持ちがぽっと華やぐギフトを

--これまでのパッケージを見ると、デザインは毎年異なりながら、どこか似たトーンも感じられますね。

近藤:創立記念日が4月なので、春から初夏のシーズンを意識しているデザイナーが多いのかなと感じます。それに加えて、資生堂が受け継いできた椿や唐草のモチーフや、オフィスをかまえる銀座の街のイメージ。これらをデザイナーそれぞれの考え方で、パッケージに表現しているのではないでしょうか。

村岡:華やかさも共通して感じますね。

近藤:それぞれのデザイナーのキャラクターも出ているよね。

村岡:パッケージを見ると、担当したデザイナーの顔が浮かびます。「たしかに○○さんらしい」と妙に納得するというか、人柄を感じますね。

--商品パッケージと比べて、デザイナーの個性が出やすいのでしょうか?

近藤:そうですね。通常の商品パッケージの仕事では、消費者の反応やマーケティング的な観点を考慮する必要があります。一方創立記念日のお菓子は、アイデアからデザインまで、ほとんど一貫して一人のデザイナーに任されるので、個人の感性がそのまま直に表れやすいのかもしれません。

村岡:「自分にはできないデザインばかりだな」と感じますね。あと、ぼく自身は入社1年目、新入社員研修の日にお菓子をもらったことが思い出深いです。新入社員は毎年4月に、葉山にある研修所「エコール・ド・ハヤマ」で研修を受けるんです。そのときに、花椿と資生堂のロゴが入っているきれいなパッケージのお菓子をもらって、すごく嬉しかったのを覚えています。2010年なので、ちょうど近藤さんがデザインされたパッケージでした。

近藤:たしかに、初めてもらったときはすごく嬉しかったよね。資生堂に憧れて入社したばかりのときですから、花椿マークの入ったお菓子をもらって、入社したんだなという実感があらためて湧いてくるような。その新鮮な気持ちをいま、久しぶりに思い出しました(笑)。

村岡:創立記念日には、社員一人ひとりのデスクにお菓子が配られるんです。そのときに、オフィスがちょっと明るくなって、気持ちがぽっと華やかになる感覚は、必ずデザインに落とし込みたいと思いながら取り組んでいました。

--お菓子に加えて、近年はお皿もあわせて制作していますね。

近藤:海外オフィスのスタッフにも創立記念品を配りたいということになり、賞味期限の関係でお菓子は難しいので、お皿を制作しはじめました。

村岡:ふだんの仕事でお皿のデザインをすることはまずないので、とてもいい経験になりました。

近藤:社員がお菓子を持ち帰ったときに、ご家族が喜ばれるという話も聞いたことがあって。日本国内、世界各地の社員やご家族、たくさんの人に届くものなので、受け取ることで明るく前向きな気持ちになるようなものをつくりたいと思っています。

椿の花が風に舞う。今年度の躍動的なデザインに込められた想い

--2018年のテーマは「翔(かける)」ということですが、それをどのように具体的なデザインに落とし込んだのでしょうか?

村岡:「翔」の言葉に前向きなイメージと勢いを感じたので、そこから「SHISEIDO Sensation」というテーマを立ててデザインをスタートしました。当初のテーマは「SHISEIDO Typhoon」としていたのですが、「Typhoon=台風」という言葉に「少しネガティブな印象がある」と社長から指摘を受けまして。「Sensation」という言葉には、資生堂がますます勢いに乗って、世界中のお客様に美しさをお届けするというイメージを込めました。

近藤:テーマの通り、風と勢いを感じるデザインだね。

村岡:はい、椿の花が風に舞っているイメージです。社長に直接デザインのプレゼンをしたのですが、そんな機会はなかなかないので、新鮮で貴重でしたね。

--デザインの際、心がけたポイントはありますか?

村岡:じつは2013年に初めてコンペに参加したとき、すごくシリアスな堅い雰囲気のものを提出して、上司に「デザインが小さい」と指摘されたんです。たしかに他の人の作品を見ると、大らかでほっこりして、そっちのほうがいいなと感じました。その経験をふまえて、今年はデザインの大らかさに気を配りました。

近藤:私はふだん資生堂パーラーで販売するお菓子のパッケージを担当しているのですが、「お菓子は神経質にデザインするとおいしくなさそうに見えるから、大らかにいきなさい」というのは、たしかにずっと言われてきたことですね。

--「大らかさ」とは具体的にどういったことでしょうか。

近藤:例えばデザインの要素を少し大きめに入れたり、白場(レイアウトの余白)を有効に使ったりといったことでしょうか。緻密で繊細なデザインにも特有のよさがあり素敵ですが、お菓子はよりゆったりとした空間を意識します。

村岡:勉強になります(笑)。ぼくは資生堂では化粧品のパッケージなど立体物をデザインすることが多いので、いつもとはぜんぜん違う頭の部分を使っている気分でした。

近藤:ふだんパーラーのお菓子を手がける私でも、創立記念菓子のデザインには特別な感覚があります。このプロジェクトはデザイナーにとって「気づきの場」という感じがしますね。

椿が風に舞い世界中に美しさを届けることをイメージした2018年のパッケージ椿が風に舞い世界中に美しさを届けることをイメージした2018年のパッケージ

Profile
村岡 明(むらおか あきら):左 Designer
2010年、多摩美術大学生産デザイン学科プロダクトデザイン専攻卒業。同年、資生堂入社。主にブランドSHISEIDOの商品デザインを担当。iFデザイン賞 ゴールド賞、レッド・ドット・デザイン賞などを受賞するほか、社外活動では国際デザインコンペ『レクサスデザインアワード』にてグランプリを受賞。
近藤 香織(こんどう かおり):右 Designer
2005年、武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。同年資生堂入社。「マジョリカ マジョルカ」を長年担当し、現在は「マキアージュ」「d プログラム」をはじめ、国内ブランドや、資生堂パーラーを担当。
Credit
CD
菊地 泰輔
D
近藤 香織
D
村岡 明

クレジット表記について
  • ECD: エグゼクティブ クリエイティブディレクター
  • CD: クリエイティブディレクター
  • AD: アートディレクター
  • D: デザイナー
  • Copy D: コピーディレクター
  • C: コピーライター
  • P: プロデューサー
  • PH: フォトグラファー
  • PL: プランナー
  • ST: ストラテジスト

クレジットは資生堂 クリエイティブ本部のスタッフのみの掲載としております。

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