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Brand Design 10代に支持される「アイスコスメ」。ヒットの鍵はつくり手のワクワク

アイスクリームパーラー コスメティクス アイスクリームパーラー コスメティクス

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インスピレーションを大切に。一からすべて手づくりしたプロジェクト

--2018年3月から期間限定で発売されている、メイクアップブランド「アイスクリームパーラー コスメティクス」(以下、アイスコスメ)。CMやポスターといった通常の広告ツールはつくらず、Instagramとウェブサイトのみで訴求したほか、販売チャネルもインターネット通販とポップアップショップに限定して展開したそうですね。

加賀谷:はい。資生堂がいままで出会えていなかった10代、20代の若いお客さまとの接点を持つべく、スマホを中心としたコミュニケーションをつくっていきました。

--商品パッケージはもちろん、Instagramやウェブサイトもすごくポップで、統一された世界観を感じます。

長谷:予算が限られていたこともあって、とにかく一から自分たちで考えて進めていく必要があったんです。普段はマーケティングチームからのオーダーに従って制作することが多いんですが、今回はデザインはもちろん、商品テーマから、イベントの企画内容、ノベルティーなど細かいアイデアに至るまで、マーケッターを含めたチームみんなで一緒に考えていったんです。

チームの人数も通常と比べると、かなり少数精鋭でした。なので全員、普段担当している仕事の幅を超えて、全員が何でも屋さん(笑)。「それぞれが受け持つ業務をあらかじめ割り振って、その範囲内で責任を持つ」といった仕事の仕方とは、まったく違うものでしたね。それぞれが初めてのことにたくさん挑戦したので、みんなのフレッシュさが詰まっている気がします。

--長谷さんご自身は、どんな「初めて」に挑戦されましたか?

長谷:私は普段はパッケージのアートディレクターなのですが、今回はクリエイティブディレクターとして、パッケージからビジュアルデザイン、ポップアップストアまで、トータルなデザインができました。そのおかげで、統一した世界観がつくれたと思います。

加賀谷:小さいスケールだからこそ、今回のようなやり方ができたというのはあると思います。これがもし、数年計画のプロジェクトだったとしたら、また違う縛りや責任、考え方が生まれていたと思います。少ない人数に加え、発売まで時間もなかったので、「いま、動かなきゃ!」っていう瞬発力で決断しながら動いていました。

長谷:普段やるような事前マーケティング調査などもしなかったんです。原宿探索をして、そのときに自分の肌で感じたインスピレーションを生かしてかたちにしていきました。

アイシャドウ、リップカード、ネイル、トーンアップベースからなるラインナップアイシャドウ、リップカード、ネイル、トーンアップベースからなるラインナップ

アイシャドウのパッケージでは、資生堂で初めて蛍光色を練りこんだ樹脂にチャレンジしたアイシャドウのパッケージでは、資生堂で初めて蛍光色を練りこんだ樹脂にチャレンジした

モデルは広瀬すずさんが務めたモデルは広瀬すずさんが務めた

バニラアイスクリームの香りのトーンアップベースバニラアイスクリームの香りのトーンアップベース

店頭で買うときと同じように、ブランドの世界観を楽しめるウェブサイト店頭で買うときと同じように、ブランドの世界観を楽しめるウェブサイト

SNSでも大人気だったショッピングバッグ。手タレは長谷さん自らが務めたSNSでも大人気だったショッピングバッグ。手タレは長谷さん自らが務めた

押し当てるだけで色がつくカード式のリップ押し当てるだけで色がつくカード式のリップ

「アイス食べたい!」「色を楽しみたい!」。そんなうきうきした気分になってもらいたかった

--商品そのものもパッと目を引きますし、アイスクリームがモチーフになっているのも、とくにターゲットである若い世代には響きますね。

長谷:カラフルなカラーバリエーションがマーケティング担当から提案されたとき、アイスクリームのおいしそうなパッケージが思い浮かびました。化粧品としてかわいがってほしい、メイクを楽しんでほしいという思いがいちばんにあったんです。

普段化粧品を訴求するときって、何時間キープするとか、お湯で落ちるとか、目が大きく見えるとか、機能性を訴えることが多いんです。そういったいわゆる「必需品」としてのメイクももちろん大事なんですが、私は「もっとメイクで楽しく冒険してほしい」とずっと思っていて。

--そんな思いのもとにデザインされた商品ですが、それをベストなかたちで伝えるためのコミュニケーションはどのようにつくっていきましたか。

加賀谷:コンセプトとして「直感買い」と「ここでしかできない体験」というのがあって。ポップアップストアはもちろん、ウェブでも店頭と同じような体験ができるつくりにしたかったんです。ここ最近のウェブサイトって、欲しいものがだいたい決まっている状態で訪れて、最後に商品のスペックだけを確認する場になってしまっている場合が多いんです。でもそれだと楽しくない、アイスコスメのコンセプトに合わないなという思いがありました。

ブランドサイトを開いた瞬間に「これ欲しい」って思ってもらえるよう、極力文字要素は少なくして。いちいちウィンドウを閉じたり開いたりせずに、1枚の縦長画像をスクロールして見られるようにまとめました。撮影も、一見合成でもつくれそうなものを、あえてアナログで作成して行ったんです。アイスの世界を楽しんでもらいながら、商品のことも理解できて、すぐにポチッと買える。それを意識してつくりました。

長谷:今回はとにかく、「楽しい体験をしてもらいたい」っていう気持ちからスタートしたんです。個人的には、化粧品というモノそのものから売っていくのが古い気がしていて。お客さまが商品を手にする理由は、バックグラウンドにあるように思うんです。

加賀谷:商品だけを見ていないってことですよね。アイスコスメでも例えば、「ショップバッグがかわいい」って、バッグだけをInstagramでアップしてくださる方も多くて。商品をとりまく体験全体が、好感度につながって、「楽しいから」という理由で「買おう」と思ってもらえたんじゃないかな、と。

長谷:デザインは、アメリカとかのあっけらかんとした、明るいアイスクリーム屋さんをイメージしているのですが、これは発売が3月21日だったから。冬から春に変わるときって、「早く春が来てほしい!」って思うじゃないですか。「アイス食べたい!」とか「色を楽しみたい!」とか、そんなうきうきした気分になってもらいたかったんです。

化粧品というのはそもそも、モノありきではなく、世界観ありきの商品なんじゃないかと思って。モノから発信する、というのもそうですし、いままで当たり前だった「同じブランドを、同じ場所でずっと買ってもらう」という考え方も、時代と合わなくなってきているような気がするんです。

「化粧品は消耗品じゃない」。丁寧につくる気持ちが、お客さまに伝わった

--ポップアップストアでは、どのような展開をしたのですか?

長谷:商品の展示や購入はもちろん、アイスクリームが食べられる場をつくったり、とにかく「体験」にこだわりました。「買い方」にも一工夫して。アイスクリームショップでフレーバーを選ぶときのように、オーダーシートに欲しい色を記入してもらい、それをレジでスタッフがショップバッグに入れてあげるというシステムにしたんです。

加賀谷:その一連の体験が大人気でした。

長谷:とっておき感があったのかも。山積みになったなかから取るのではなくて、店員さんが自分だけのメイクセットを一つひとつつくってくれる。化粧品は消耗品じゃないって、私はいつも思っているんですよね。

加賀谷:丁寧につくっているこちら側の思いも、お客さまに伝わったのかもしれないですね。

--実際にアイスコスメを手にしたお客さまの反応はいかがでしたか?

長谷:すごく好評いただきました。ポップアップストアにいらした子たちを見ていると、例えばネイルひとつ選ぶのに30分もかけてたり。350円くらいのものなのに、すごく真剣に悩んでいる、その様子を見て感動しました。もしかしたら、その子にとっては初めてのコスメだったのかも......。だとしたら、その初めてに選んでもらえて本当によかったと思いました。

加賀谷:モノづくりをしている立場として、私たちは使う人の気持ちをいちばんに考えなきゃいけないと思うんです。店頭やSNSでの反応を見る限り、今回はその期待に応えられたかな、という手応えがあります。

--アイスコスメを手掛けてみて、今後につながりそうな新しい発見はありましたか?

長谷:チャレンジするのは楽しいなって思いました。過去の成果にしがみつかず、失敗してもいいから新しいことをやってみる。今回それを実践してみて、つくる側の気持ちが、お客さまには想像以上に伝わるものなんだなと思いました。「私たちのチャレンジする気持ちに、お客さまもついて来てくれるんだ」と、自信につながりました。

加賀谷:私は普段、商品が完成したあと、コミュニケーションの制作から関わることが多いんです。今回は商品開発の段階から携われたことで、「できることの可能性がすごく広がるな」と思いました。最初にこのパッケージを見たとき、すごくテンションが上がって、自分のなかにいろんなアイデアが浮かんできた。そのわくわくした気持ちでものをつくって世の中に出していくことが、やっぱり大切なんだなと思いました。

長谷:アイスコスメは資生堂の新しいプロジェクト「COSMETIC PRESS(コスメティック プレス)」の第一弾ブランドでもあります。コスメティック プレスではこれからも、「いま、これ」という時代を掴んだ期間限定のブランドを発信していく予定です。楽しみにしていてほしいですね。

ポップアップストアのディスプレイポップアップストアのディスプレイ

ポップアップストアで購入特典として配布した、見た目にも楽しいアイスクリームポップアップストアで購入特典として配布した、見た目にも楽しいアイスクリーム

オーダシートで、欲しい商品をチェックして購入するオーダシートで、欲しい商品をチェックして購入する

Profile
長谷 麻子(はせ あさこ) Creative Director & Art Director
多摩美術大学卒。最近ではINTEGRATEなど国内ブランドのパッケージデザインを担当。他、IHADAではパッケージからグラフィック、CMまで手がける。COSMETIC PRESSの立ち上がりより、クリエイティブディレクターからデザイナーまで務めている。
加賀谷 のどか(かがや のどか) Digital Creative Planner
多摩美術大学卒。広告代理店でデジタルコミュニケーションのプランナーとしてクリエーティブの企画・開発などに携わる。2015年より資生堂宣伝・デザイン部に在籍。コミュニケーション設計・企画・開発の推進を行っている。
Credit
CD/AD
長谷 麻子
P
谷隈 直美
Digital
加賀谷 のどか
D
近藤 香織(パッケージ)
D
小林 恵理子(スペース)
PH
伊東 祥太郎

クレジット表記について
  • ECD: エグゼクティブ クリエイティブディレクター
  • CD: クリエイティブディレクター
  • AD: アートディレクター
  • D: デザイナー
  • Copy D: コピーディレクター
  • C: コピーライター
  • P: プロデューサー
  • PH: フォトグラファー
  • PL: プランナー
  • ST: ストラテジスト

クレジットは資生堂 クリエイティブ本部のスタッフのみの掲載としております。

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