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Package Design 「口紅はときめきを与えてくれる存在」クレ・ド・ポー ボーテの新生ルージュで凛とした美しさを

2017年7月に生まれ変わったクレ・ド・ポー ボーテの「ルージュアレーブルn」 2017年7月に生まれ変わったクレ・ド・ポー ボーテの「ルージュアレーブルn」

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「感性に響く」体験を提供したい。新しい「ルージュアレーブル」が目指す本質的な美しさ

--2017年7月、資生堂グループのハイプレステージブランド「クレ・ド・ポー ボーテ」から、口紅を中心とした商品がリニューアル発売されました。あらためて、ブランドについて教えてください。

永田:「クレ・ド・ポー ボーテ」は1982年の誕生以降、30年以上愛され続けている資生堂の最高級ブランドです。最先端の肌サイエンスによるスキンケアと、研ぎ澄まされた美意識が反映されたメーキャップラインによる最高級の化粧品であることは誕生以来変わりませんが、時代とともに美しさの基準や、ラグジュアリーの価値観、理想の女性像はゆるやかに変化を遂げています。

現代のクレ・ド・ポー ボーテがとらえるのは、グローバルな姿勢で、本質に向かっている女性です。かつてはグローバルというと仕事やプライベートで世界を飛び回るキャリアウーマンのイメージでしたが、いまは内面の豊かさを大切にしている女性と考えています。家族や友達などの身近でかけがえのない人、そして自分自身を大切にしているしなやかな女性こそ、クレ・ド・ポー ボーテの考えるグローバルでラグジュアリーな女性像です。ラグジュアリーの価値観も表面的な華やかさから、より本質的な姿勢へと向かっているように思います。

--今回、ブランドの顔ともいえる口紅「ルージュアレーブル」がデザインから刷新され、12色のラインナップが登場しました。リニューアルの背景について教えていただけますか?

永田:しばらく唇はナチュラルな色がトレンドでしたが、数年前から口もとで彩りを楽しむ感覚が世の中に戻ってきました。クレ・ド・ポー ボーテは本物志向の女性たちに向けて口紅から究極のラグジュアリー・ルージュを提案していきたい、という開発の依頼を受け、口紅の発色や艶、質感などはもちろん、形状からパッケージまで大胆に一新することになりました。パッケージデザインは、「本当の品格」「真の贅沢」をあらためて問いなおすところから始まりました。

--その結果、どういった結論に至ったのでしょう。

永田:「感性品質」というテーマを掲げて商品開発を行うに至りました。人間の繊細な五感を、あらゆる面から満足させる品質を提供することを目標としたのです。

「本質」を目指すとき、しばらく続いた効率や時短を重視したライフスタイルに違和感を持ちました。そして、その真逆にあるはずの「本当の快適さや心地よさ」を具体化するための核となるアイデアとして、「Life Time Experience, 一生ものの体験」を掲げました。

じつは、私自身が人生で初めて購入した口紅が「ルージュアレーブル」なんです。当時の円柱のケースにあしらわれたシンプルで上質なパッケージのディテールと、その高い完成度。当時のメーキャップアートディレクターによる色彩の完璧な美しさ......。広告の美しさも群を抜くものでした。そのすべてに魅了され、10代の私はかなりの背伸びをして手に入れました。

そのときのクレ・ド・ポー ボーテとの出会いの衝撃がまだ自分のなかに残っていることを思い出し、「ラグジュアリー体験は、感性に響き、一生残っていくもの」と、はっとしたんです。いまの時代が求めている品質は、そういうものなのではないかと思い至りました。幼い頃に体験した「一生ものの体験」が、今回の開発に大きな気づきを与えてくれました。

新「ルージュアレーブルn」 新「ルージュアレーブルn」

「ダイヤモンドカット」という技法により一つひとつ丁寧に記される刻印「ダイヤモンドカット」という技法により一つひとつ丁寧に記される刻印

クラフトマンシップを随所に効かせ、細部までこだわり抜いたパッケージ

--パッケージデザインについて、こだわった部分はどこですか。

永田:忘れられないような感性を揺さぶる品質、手に取ったときの感動を実現するために、クラフトマンシップを取り入れ、素材と技法で細部に美しさを宿すことにこだわりました。これまで樹脂製だった口紅のボディとキャップは、手に触れた時にひんやりとした感覚が残る金属製に。人間の触覚は、こうした差異を瞬時に感じ取っていると思います。

また、キャップの天面のゴールド部分と側面、そして表面に浮き上がったロゴは、すべてごく薄い一枚の金属でできています。金属をプレス加工で伸ばしながら角形状にします。成型した金属の表面をなめらかにしたあとにアルマイト加工で色をつけ、塗装して、研磨して......など、70以上の工程を経てできあがります。

さらに、天面の四辺と四隅、および紺地に金の「クレ・ド・ポー ボーテ」のマークを美しく磨くために、「ダイヤモンドカット」という金属の処理加工技術を採用しています。ダイヤの単結晶の刃先で削るという、精密機器によく使われる技術です。手間、コスト、技術力が必要ですが、この手技でしか生まれない緻密な輝きを実現するために採用しました。

--ゴールドの部分のみ金属にして、キャップ全体はプラスチックにする方法もありますよね。すべてを金属でつくるのは、かなりの挑戦ではないでしょうか。

永田:異素材を組み合わせるときには、どうしても「貼る」という工程が発生します。それは、本物を追求する「クレ・ド・ポー ボーテ」にはそぐわない選択だと思いました。ロゴも印刷ではなく、擦れなどで消えてしまうことなく、「永遠に刻み込む」刻印にこだわりました。この姿勢が違いを生むと考えたのです。

樹脂は軽くて量産向きの便利な素材ですが、金属やガラス、木材などが持つ本質的な魅力には叶いません。また、一枚の金属でつくることで、「どうやってできているんだろう」と想像力を掻き立てるような神秘性も生まれます。それは多くのノウハウやテクニック、叡智に裏づけされているもの。そんな崇高な世界を結実してこそ「本物」になれると考えています。

--口紅の形状は、とても官能的なデザインですね。

永田:課題は「塗りやすさ」の追求でした。開発者や研究員がこだわったなめらかな質感、メーキャップアートディレクターによって選び抜かれた美しい発色を楽しんでもらうにはどうしたらいいのか。行き着いた答えが「唇の形に沿うようにデザインする」ことでした。

官能的な花びらのような姿は唇にフィットした形から生まれたものです。人間の感性は鋭いので、唇に口紅が触れるときも、ファーストタッチで、心地よい、塗りにくい、滑りがよくない、など多くのことを瞬時に感じ取っています。紅の形状を含めたデザインのすべてにおいて、人間が持つ「感性」という優れたセンサーに耐えうるものになるよう、とことん追求しています。

「ときめきをくれるもの」。口紅を通じて凛とした美しさを提供したい

--新生「ルージュアレーブル」を手に取るお客様たちに、メッセージをお願いします。

永田:このプロジェクトに着手するとき、実際に店頭を訪れました。お客様を拝見していると、なんとなくテスターを眺めているうちに販売員から声をかけられ、カウンセリングを受けて商品を選び、お会計という流れがほとんど。私自身も、同じ体験をしました。お客様が実際にキャップを開けたり、手になじむ感じを楽しんだりというように、商品そのものに触ることなく購入に至っていることに気づいたんです。

でも、私たちの生活の多くはこのような体験ではないことに気づきました。万年筆やメガネ、靴など、多くの場合、現物を手に取ってから購入を決めますよね。そこで今回は、テスターにも本物と遜色ないものを用意しました。キャップの嵌合も、上質な茶筒を閉めるときや、高級な万年筆のキャップを開けるときの使い心地を参考に、感覚に訴えるスムーズな動きにこだわっています。色を試してみるだけでなく、ぜひ実際に「ルージュアレーブル」に触れて、みなさんの手のなかで魅力を感じてもらえたらうれしいですね。

--女性にとって口紅とはどんな意味を持つものでしょうか。

永田:ときめきを与えてくれる存在、といえるのではないでしょうか。心の鍵を開けて、気持ちを明るくしてくれる。ときには、人生を変えてしまうほどの力をくれる。これって口紅だけにある魅力のように思います。キワのキワまで想いを込めてつくっているので、この1本が多くの女性の原動力になったらうれしいです。

Profile
永田 香(ながた かおり) Creative Specialist / Art Director
埼玉県出身。1997年英国Kingston University Graphic Design Department卒業。98年資生堂入社。現クレド・ポー・ボーテ パッケージデザイン アートディレクター。主な仕事に、ベネフィーク、マキアージュ、HAKU、香油花椿、マシェリ、グローバルブランド「SHISEIDO」のホワイトルーセント、ベネフィアンス、フレグランスZEN。ザ・ギンザコスメティックスではコミュニケーションのデザインも手がける。
Credit
CD
渋谷克彦
AD
永田香
D
永田香、長崎裕香、松石翠

クレジット表記について
  • CD: クリエイティブディレクター
  • AD: アートディレクター
  • D: デザイナー
  • C: コピーライター
  • P: プロデューサー
  • PH: フォトグラファー
  • PL: プランナー

クレジットは資生堂 宣伝・デザイン部のスタッフのみの掲載としております。

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