サクヒン

Other 忙しいママ・パパと子どもがふれあう時間を豊かに。LOHACOとコラボした「絵本&コスメ」開発秘話

忙しいママ・パパと子どもがふれあう時間を豊かに。LOHACOとコラボした「絵本&コスメ」開発秘話 LOHACOとコラボした絵本&コスメ

Comment

忙しいママ・パパの「暮らしになじむ」アイテム

--働くママ・パパと子どものコミュニケーションを育むために開発された「おやすみ香り絵本」「おはよう洗顔シート」「いってきますサンスクリーン」。これらの商品はどんなきっかけで生まれたのですか?

長崎:日用品ショッピングサイトのLOHACO(ロハコ)は、昨年秋に『暮らしになじむ LOHACO 展』を開催しました。そこに資生堂も出展することになり、「暮らしになじむ」をテーマに、LOHACOのお客さまに対して私たちらしい商品を開発しようという思いでスタートしました。

--「暮らしになじむ」というテーマを、どう商品に落とし込んでいきましたか。

長崎:LOHACOを利用されているお客さまの多くは「働く新米ママ・パパ」です。そこで、商品開発のはじめに彼らの暮らしについて考えました。調査により、働く親と子どもは出勤前と帰宅後のたった3時間しか一緒に過ごせないことがわかりました。私にも3歳の娘がいるのですが、会社勤めをしていると、1日のなかで子どもと接する時間が短いことが課題だと感じていて。

仕事や家事で余裕がないママ・パパのなかには「ちゃんと子どもとコミュニケーションが取れているのかな」と不安に思う人も多いだろうということで、「コスメティクスコミュニケーション」というコンセプトを立てました。化粧品が、働くママ・パパと子どもとの限られたコミュニケーションの時間を豊かなものにするお手伝いができたら、というのがこのコンセプトのねらいです。

永岩:商品を考えるにあたっては、寝る前の「おやすみ」、朝起きたときの「おはよう」、仕事や保育園に出かける「いってきます」の3回を親子のコミュニケーションの機会と捉え、ではそこにふさわしい化粧品は何だろう? と絞り込んでいきました。

平岡:最初は親子で一緒に使用するシーンを色々考えながらデザインを考えていました。「おやすみ」「おはよう」「いってきます」の3つの軸が固まってからはアイテムを絞り、最終的に絵本、洗顔シート、日焼け止めの3商品に決定しました。

おやすみかおり絵本「かおりはかせフレーバー」 おやすみかおり絵本「かおりはかせフレーバー」

いってきますサンスクリーン いってきますサンスクリーン

おはよう洗顔シート おはよう洗顔シート

絵本に登場するキャラクターや葉っぱ等のモチーフは、「サンスクリーン」「洗顔シート」とも連動している 絵本に登場するキャラクターや葉っぱ等のモチーフは、「サンスクリーン」「洗顔シート」とも連動している

感性とコミュニケーションを育む「おやすみかおり絵本」

--3つある商品のなかでも特にユニークなのが「おやすみかおり絵本 かおり はかせフレーバー」です。付属の「かおりシール」を貼りつけると香りが楽しめるということですが、化粧品メーカーが絵本を作るなんて斬新ですよね。

長崎:打ち合わせを重ねるなかで、「ターゲットの未就学児がいちばん興味を持ちやすいものって絵本だよね」という話になったんです。私たち開発チームには、幼い子どもに香りに対しての感性を豊かにしてほしいという思いもあり、こすると匂いがする仕様にしました。

絵本のストーリーは永岩さん作で、主人公のアライグマ・フレーバーくんが「雨」「土」「太陽」といったさまざまな香りと出会うという内容なのですが、バナナやりんごのようなわかりやすい香りではなく、想像力を想起させるような、雨など自然界の抽象的な香りがストーリーと連動して登場するのがポイントです。

永岩:実は、これまでも資生堂が続けている五感についての研究のなかで、嗅覚にフォーカスした香りの絵本を制作した実績があったんです(商品化はされていない)。また「香りを芸術までに高めたい」という思想は初代社長の福原信三(1883年〜1948年)の時代からずっとあるので、資生堂の哲学の根底でもあると思っています。これはあくまで絵本ですが、資生堂の香りに対する思いの結晶でもあるんです。

--絵本の制作にあたって苦労した点などはありますか。

長崎:イラストのトーンを決めるまでが大変でしたね。

永岩:世の中の絵本のなかには、シンプルな線で描かれているものから、色をたくさん使って描き込まれているものまでいろいろありますよね。チームでめざしたのは、感性を刺激する、見るたびに新しい発見があるようなもの。いろいろな情報を、うるさくならないよう上手に描いてくれるイラストレーターさん探しには力を入れました。

--制作の順序としては、ストーリーと言葉が決まってからイラストが入っていくのでしょうか。

永岩:そうですね。ストーリーを考えるまでは早かったのですが、言葉遣いにさりげなく引っかかりを持たせたり、絵本ならではの言い回しに留意したりする作業に時間がかかりました。絵本は何度も読むものですから、語感にはこだわりました。コピーライターとして、いつもの化粧品のコピーをつくる仕事とはまったく違ったのが新鮮で楽しかったです。のびのびと自由にやらせてもらいました。

使うシーンを細かく設定したリアルなものづくり

--絵本以外の、化粧品についても伺っていきます。まず「おはよう洗顔シート」はどうやって使うのですか?

平岡:これは、ベッドサイドに置いておくイメージでデザインしました。朝起きたときの子どもの顔は、汗やよだれなどで意外と汚れているもの。でも、まだ上手に自分で顔を洗えない......ということから、子どもを起こしがてら顔も拭いてしまおう、という発想で制作しました。なかには、化粧水を含浸させた、取り出しやすい葉っぱの形のシートが入っています。

--「いってきますサンスクリーン」は、絵本のキャラクター「フレーバーくん」の形をしていますね。

長崎:葉っぱの形をした洗顔シートも、フレーバーくんの形をしたサンスクリーンも、絵本の世界から飛び出したようなデザインにすることで、子どもたちも愛着を持ちやすいのではないかと考えました。サンスクリーンは、感触の面白さを体感してもらうために「フレーバーくん」の後頭部をエラストマーというゴムのような感触が面白い素材にしたり、振ったときに楽しい音がするように撹拌用のボールを多めに入れたり......とさりげなく、親子で使うときに楽しくなるような工夫をしています。

--ママ・パパと子どもに向けた化粧品だからこそ、こだわった部分はありますか。

長崎:今回特に注力したのが「使用するシーンの想定」です。サンスクリーンは朝、出かける前に塗るものですが、忙しくてバタバタしていると塗り忘れてしまうことも多いんです。だから玄関のドアノブやバッグにつけられるようなストラップをつけました。これなら出る直前や、出かけてからでも塗ることができますよね。生活シーンと使うタイミングを細かく想像しながらの商品開発は、新しい挑戦でした。

平岡:実際に、サンスクリーンをベビーカーやバッグにつけてみると、ストラップはボタン式にしようとか、携帯ストラップのような形だと頼りないなどのリアルな事実がわかってくるんです。そういった検証は普段の仕事でも大事にしていきたいですね。

長崎:あとは、単なるキャラクターグッズに見えないように工夫しました。「フレーバーくん」はアライグマなので本来なら茶色なんですが、そのまま形にするとマスコットみたいになってしまいます。青みがかった色や、使いやすさを一番に考えた形、パッケージの素材の触りごこちなど、ちょっとしたところで「化粧品らしさ」が出るようにこだわりました。

ベッドサイドに置けるようデザインされた「おはよう洗顔シート」 ベッドサイドに置けるようデザインされた「おはよう洗顔シート」

玄関のような狭いスペースにもひっかけられる「いってきますサンスクリーン」 玄関のような狭いスペースにもひっかけられる「いってきますサンスクリーン」

資生堂宣伝部によるユニークなデザインの商品「タコ・イカ・マンボウ」(1989年) 資生堂宣伝部によるユニークなデザインの商品「タコ・イカ・マンボウ」(1989年)

アライグマのフレーバーくんの形をしたサンスクリーンのパッケージは、触り心地にもこだわり試作品も多数制作 アライグマのフレーバーくんの形をしたサンスクリーンのパッケージは、触り心地にもこだわり試作品も多数制作

かけがえのない親子の時間を、コスメを通じてもっと豊かに

--LOHACOさんの反応はいかがでしたか。

平岡:資生堂に対して「自立した女性に向けた、パキッとした化粧品」を手がけている、強いイメージがあったそうで、ポップで優しい世界観の親子向け商品を展開したことについてはポジティブな反応をいただきました。でも、資生堂の商品開発の歴史を紐解くと、海の生き物をかたどったパッケージのサンオイル・サンスクリーン・シャンプーのシリーズ「タコ・イカ・マンボウ」(生産・販売終了)など、ユニークなデザインのものが意外と存在しているんです。制作する立場になったことで、資生堂の歴史にあらためて注目したことでの気づきもいろいろありました。

永岩:この3商品を『暮らしになじむ LOHACO 展 2016』の出展企業を集めたマーケティングコンソーシアムで発表する機会があり、そこで開発経緯をどう伝えるか悩みました。コンセプトやパッケージデザインがとてもいい方向に進んでいたので、ターゲットや製品コンセプトなどを説明するいわゆるプレゼンテーション資料だと、伝えたいメッセージや思いが限られてしまう気がして。

最終的に、通常のスライド資料で商品の開発経緯や説明をするのではなく、ドキュメンタリー形式のイメージムービーに仕上げました。ムービーには働く親とそのお子さんに登場していただき、彼らのリアルな「ふれあい」の瞬間を映し出すことで、かけがえのない大切な親子の時間を実感してもらえる内容にしました。マーケティングコンソーシアム中、ムービーを見て涙ぐまれる参加者の方もいて、かなり反響がありましたね。

--(ムービーを見て)忙しく働くママ・パパはどこか孤独な思いを抱えているものですが、そこを優しくケアしてくれる内容ですね。

永岩:親子のコミュニケーションにとって大切なのは「商品を使った先にある部分」だと思っています。絵本を読んだり、サンスクリーンを使って楽しんだりした先にある、ふれあいだったり会話だったり。それがどうなるか、という部分を常に意識してやっていましたね。

長崎:子育てって「思い通りにならないこと」の連続なので、忙しいママ・パパはペースが乱されてイライラしてしまうこともあると思うんです。そこで、ママ・パパの「心のキレイ」を大事にしたい、その心の状態を作る手助けをしたい、という話はチームでよくしていました。心がキレイなら、表情もキレイになると思うので、素敵なママ・パパでいてほしいという気持ちも込めています。

平岡:お子さんが生まれると、時間も余裕もなくなってしまうのは当然だと思います。でも、そこで「時短」とか「効率」を直接的に追求するのは「どこか味気ないな」という気持ちがぼくのなかにありました。にっこりするようなキャラクター、ほっとするような色使い、快適に使えるデザインを取り入れた商品でストレスを忘れ、結果として効率的になったらいいなと思っています。心にゆとりが生まれて、親子のコミュニケーションが豊かになってくれたらうれしいです。

Profile

(左から)

永岩 亮平 Copywriter
東京都出身。早稲田大学を卒業後、広告制作会社2社を経て2011年資生堂入社。現在は、dプログラム・文藝春秋・エリクシールなどを担当。

長崎佑香 Art Director
1982年、名古屋生まれ。2006年愛知県立芸術大学美術学部デザイン・工芸科卒業。同年、資生堂入社。デザイナーとしての主な仕事にブランドSHISEIDO、Clé de Peau Beautéなどがある。現在は、デザインとテクノロジーを融合させて美しい生活文化を創出するための研究チーム「DesignR&D」で、未来の化粧や、ECにおける新しいデザインのあり方などを提案している。

平岡 好泰 Designer
宣伝・デザイン部デザイナー。多摩美術大学卒業後、資生堂に入社。マキアージュ、TSUBAKIのパッケージを担当し、現在はメンズブランドやパーソナルケアブランドを担当。

Credit
AD
長崎 佑香
D
平岡 好泰
C
永岩 亮平

クレジット表記について
  • CD: クリエイティブディレクター
  • AD: アートディレクター
  • D: デザイナー
  • C: コピーライター
  • P: プロデューサー
  • PH: フォトグラファー
  • PL: プランナー

クレジットは資生堂 宣伝・デザイン部のスタッフのみの掲載としております。

ページの先頭