サクヒン

Package Design 妥協しない「ものづくり」のプロたちが生んだ、MAZDA×資生堂のコラボフレグランス

MAZDAの思想・哲学を表現したフレグランス「SOUL of MOTION」(非売品) MAZDAの思想・哲学を表現したフレグランス「SOUL of MOTION」(非売品)

Comment

「できないことからスタートする」という言葉が、大胆なデザインを生んだ

--MAZDA株式会社(以下MAZDA)は、デザインの思想・哲学である「魂動(こどう)-SOUL of MOTION」をクルマ以外のモノで表現したアート作品を制作しています。今回、新たなコラボレーションとして資生堂が依頼を受け、香りで「魂動」を表現したフレグランス「SOUL of MOTION」がつくられたそうですね。完成までの経緯はどのようなものだったのでしょうか?

川合:まず、MAZDAから「魂動」を体現するフレグランスをつくってほしい。さらには「いままでにない発想で、できないことからスタートしてほしい」というお話があり、2015年の1月にプロジェクトがスタートしました。通常であれば成形や生産といった条件に気を配りながらデザインを行うのですが、この言葉がきっかけとなって、制約にしばられずに大胆な発想でデザインすることを決意しました。

--アートディレクターである川合さんをはじめ、開発チームは実際に、広島にあるMAZDAの工場を訪れたそうですね。

川合:車に試乗させてもらったり、ものづくりの現場を見学させてもらったり、そこで働く人たちのこだわりなどをお聞きしました。同じものづくりに携わる者として、社員の方々の熱い想いを目の当たりにしたことも、デザインの原動力になったと思います。

--フレグランスであることに気づかないようなシンプルでシャープなデザインと、強さ、情熱、生命観を表現した心地よい香りが印象的です。

川合:エッジのきいた緊張感のあるディティールと曲面をつなげることで、MAZDAのデザインがもつ、先進感やスピード感を表現しました。香りとデザインが一体になるように、何度もパフューマー(調香師)と話し合いながら進行しましたが、中身と外観を並行してつくることはあまりないので、とてもエキサイティングでした。

フレグランス「SOUL of MOTION」 フレグランス「SOUL of MOTION」

ステンレス素材をプレス加工してからつなぎ合わせる ステンレス素材をプレス加工してからつなぎ合わせる

継ぎ目のないデザインは、職人の手によってつくられている 継ぎ目のないデザインは、職人の手によってつくられている

ガラスの美しい質感は、木などを使って丹念に磨いてできたもの ガラスの美しい質感は、木などを使って丹念に磨いてできたもの

なめらかなフォルムは日本の職人が手がけた唯一無二の曲線美

--今回のフレグランス「SOUL of MOTION」のクリエーティブコンセプト「emotional simplicity(削ぎ落とした先の凝縮された興奮)」には、どのような思いが込められていますか?

川合:全体から細部に至るまで、一貫して「削ぎ落とすことで、研ぎ澄まされた美に到達するイメージ」を表現しました。これは日本特有の美意識から着想を得たものですが、MAZDA、そして資生堂、どちらのクリエーティブにも通底する思想だと思っています。いくつものアイデア出しとディスカッションを経て、現在のコンセプトに行き着きました。

--フレグランスなのにガラスボトルを覆ってしまう斬新なフォルムと、美しい曲線は、どのようにして生み出されたのでしょうか?

川合:キャップもボトルも手仕事による仕上げを施しています。プレス加工、溶接、磨きなどのプロセスを経たステンレス素材のオーバーキャップは、継ぎ目のないなめらかな表面が特徴です。ミクロの単位まで徹底的に磨き上げた金属研磨技術も、職人の方々の手作業によるもの。完成品のクオリティーは想像以上で、実際に作業を見ていた私たちは、思わず歓声をあげましたね。

--オーバーキャップのなかに収められたガラスボトルも、キャップと同様のなめらかなカーブと透明感が際立っていますね。

川合:このガラス磨きは、江戸川区の伝統工芸士の職人さんにお願いしました。岩や木、砂を使って研磨をする昔ながらの手法は、本当に大変な作業で驚きましたし、匠の技術に頭が下がりました。その過程を経て生まれる、内側から輝きを放つような透明感は唯一無二だと思います。

妥協のない「ものづくり」が、シンプリシティな世界観を叶えた

--制作過程で一番大変だったことはなんでしょうか?

川合:シンプリシティの追求ですね。その一例が、オーバーキャップから容器を取り出す仕組みなのですが、オーバーキャップでガラスのボトルが覆われたデザインを構想したときは、まだ取り出し方についての解決方法が見つかっていなかったんです。

--オーバーキャップを持ち上げることで、すっぽりと収まったガラスボトルの下部がスッと降りてきて、そこから引き抜ける構造になっていますよね。これは、ありそうでなかったスムーズな方法だと思います。

川合:ボトルを取り出す動作一つにも、スマートな所作とシンプルさを追求したい。そんな想いから社内で何度も検討を重ねました。そのなかでデザイナーの村岡による、ボトル内の勘合機構が上下に動くというアイデアがもとになり、現在の仕組みに至りました。ボトルやオーバーキャップのデザインを変えずに取り出すことができないかを考え抜いた結果、シンプルでかっこよく使える仕組みになったと思います。

--フレグランスに同封されたメッセージカードや外箱には、資生堂の書体が使われ、クールで洗練された雰囲気と同時に、エレガントなイメージを受けます。この書体には、どういった想いが込められているのでしょうか?

川合:100年近く継承されてきた資生堂書体で「魂動」を表現することにも挑戦しました。MAZDAのスピード感、そして資生堂のエレガンスの競演がテーマです。

--約1年8か月におよぶプロジェクトを振り返って、現在の心境はいかがですか?

川合:他企業とのコラボレーションはとても大きな刺激になりましたし、「いままでにない発想で、できないことからスタートしてほしい」と言っていただいたことで、クリエーティビティを存分に発揮できたと思います。ある意味、無謀であると同時に、クリエーターにとっては、これ以上ないありがたい言葉ですよね。今回のプロジェクトの経験が、今後様々なクリエーティブにもつながっていくような気がしています。

オーバーキャップの外し方は嵌合部方法(一番左)に決まった オーバーキャップの外し方は嵌合部方法(一番左)に決まった

男性の手にも馴染むユニセックスなデザイン 男性の手にも馴染むユニセックスなデザイン

資生堂書体による「魂動」 資生堂書体による「魂動」

Profile
川合 加奈子(かわい かなこ) Art Director
宣伝・デザイン部 アートディレクター。京都教育大学特修美術学科卒業。デザイン会社などを経て2005年資生堂入社。インテグレート、エリクシールなどのパッケージデザイン、アートディレクションを担当。
Credit
CD
信藤洋二
AD
川合加奈子
D
村岡明
C
永岩亮平
P
高嶺祥子
書体制作
小林 豊

クレジット表記について
  • CD: クリエイティブディレクター
  • AD: アートディレクター
  • D: デザイナー
  • C: コピーライター
  • P: プロデューサー
  • PH: フォトグラファー
  • PL: プランナー

クレジットは資生堂 宣伝・デザイン部のスタッフのみの掲載としております。

ページの先頭