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Graphic Design 「レディ」が世界をキラキラにする! マキアージュの新年広告2016

2016年新年広告 2016年新年広告

Comment

ストレートに、「美」で勝負する

--新年の新聞広告といえば、制作者にとっては1年で最も気合いの入る広告のひとつですよね。今回は企業の広告ではなく、ブランド「マキアージュ」のビジュアルとなったそうですが、その経緯を教えていただけますか。

植木:各ブランドからそれぞれ企画を提案するコンペがあったんです。「ブランド単体でも大きなPR効果があり、かつ華やかでお正月らしい『一枚絵』を作る」というオーダーでした。去年の企業広告のテーマは「美の多様性」。あなたはそのままですばらしいのだ、というメッセージを発信していたのですが、今年はブランドからのメッセージなので、ふりきって「これが美だ!」と宣言してみたいと思いました。テーマは「あこがれと衝動」。選ばれたときはとても嬉しかったですね。

--そこからどんなビジュアルを企画していったのでしょうか。

西本:マキアージュは女性であることの楽しみや、すべての女性の中にある美しさを追求していくメーキャップブランドです。ブランドを体現するミューズである長谷川潤さんと水原希子さんが共演するということは企画の最初にまず決まりました。そのとき、「自分の意志で」お化粧をする強さ、誰かの目を気にするのではなく、のびのびと女性であることを楽しんでもらいたいというマキアージュのメッセージを伝えようと、撮影時はできるだけ二人の自然な様子を押さえたいと思いました。

--写真家とはどんなやり取りがあったのでしょうか。

西本:今回はエマ·テンペストさんというイギリス人の女性フォトグラファーにお願いしました。撮影現場もスタジオ用に完璧なセットを組むのではなく、外からの風が抜ける開放的な空間を選びました。長谷川さんは母でもありながら、常に「今」の美しさを体現している方ですし、水原さんは奔放な魅力で、第一線を駆け抜けています。エマさんには、こうしたモデルの2人がそれぞれの「女性として見せたい姿」を撮ってほしいとオーダーしたんです。それに、水原さんと長谷川さんは旧知の仲。今回は久しぶりに再会する撮影だったようで、二人とも会った瞬間から楽しそうにしていたのですが、そのテンションのまま撮影がスタートした感じですね。結果として、女性フォトグラファーが引き出す女性らしさというか、健康的な色っぽさをとらえることができたと思います。お正月に新聞を開いたお父さん方はドキっとしてしまうかもしれませんが(笑)。

植木:できた写真を周囲に見せたところ、「男性を誘惑するというより、自分の色っぽさを楽しんでいるようだね」なんて声もありました。世界に受け入れてもらうのを待つのではなく、「わたしが世界を切り開く」といった女性の芯の強さが出たのではないかと思います。

美のパワーが鼓動となって広がるコピーライティング

--コピーにある「レディの鼓動をきかせてあげる。」はどんな思いで書かれたのでしょうか。

植木:ボディコピーが先に決まったので、キャッチコピーはそこに誘引するリードの目的です。ビジュアルでは圧倒的な美を見せて、コピーでは「お化粧したい!」という衝動を呼び起こしたいと考えました。といってもスムーズにたどりついたわけではなく、コピーは本当に大変でした。コンペが始まった8月から数えると最終的に1000本は書いたでしょうか。ビジュアルの選定も合わせて決定するまではかなり難航しました。

--最も難航した部分はどこだったのでしょうか。

植木:企業ではなくひとつのブランドが新年広告をだすという試み自体が初めてだったので、目的やメッセージの立ち位置が決めにくかった部分でしょうか。私個人としても、「広告全体が機能すればコピーは脇役でいい」というチームの一員としての気持ちと、「でも私はこのコピーで勝負したい!」というエゴが常にせめぎあっていました。

--「じぶんをドキドキさせたら あの人をワクワクさせよう 世界だってキラキラにして それから それから レディにしあがれ。」というボディコピーも素敵ですね。

植木:いちばん伝えたいことはここに込めました。まず自分が変われば、「あの人(=他者)」の気持ちが変わるかもしれない。口紅1本でも思いを込めて引けば、自分から周囲を変えていけるし、世界だってキラキラ輝かせられるかもしれない。ポジティブなパワーがどこまでも広がっていくイメージを伝えるために、「それから それから」の末尾には句点を入れませんでした。

--お正月広告ならではと感じた部分はどこですか。

植木:今回、他業種も含めた過去数年の新年広告をひたすら見続けたのですが、お正月という1年に1回のタイミングなので、どの企業も勝負をかけているように見えました。私たちも大変だったので、どの広告を見てもこれができるまでにどれだけの苦労があったのかと想像してしまいました(笑)。ただ、やはり「いいこと」を丁寧に伝えようとするコピーが多いなとも感じたんです。だったらその逆をいこうと。なるべく言葉の量はおさえて、優等生的ではないけれど誰かの心にぐっと刺さるような強いイメージを打ち出したいと思いました。広告というのは本来、日常の中に潜ませるものだけど、お正月の新聞だけは広告の展覧会のようなところがありますよね。一人でも多くの人が、この広告を見たあとに「そうだ お化粧、しよう。」と思ってくれれば嬉しいです。

掲載日 2016年1月

植木 彩、西本 歩
Profile

植木 彩(うえき あや):左 Copy Writer
1985年、愛知県生まれ。2008年、早稲田大学政治経済学部を卒業後、資生堂に入社。現在、日本放送協会「あさイチ」制作班に出向派遣中。

西本 歩(にしもと あゆみ):右 Art Director
1984年、東京都生まれ。2008年、武蔵野美術大学基礎デザイン学科を卒業、資生堂に入社。現在、MAQuillAGEを主に担当。

Credit
CD
高橋 歩
AD
西本 歩
C
植木 彩
D
高田 大資、小林 一毅
PR
富士榮 史
SV
鐘ヶ江 哲郎、長島 康之

クレジット表記について
  • CD: クリエイティブディレクター
  • AD: アートディレクター
  • D: デザイナー
  • Copy D: コピーディレクター
  • C: コピーライター
  • P: プロデューサー
  • PH: フォトグラファー
  • PL: プランナー
  • ST: ストラテジスト

クレジットは資生堂 宣伝・デザイン部のスタッフのみの掲載としております。

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