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Package Design 肌革命を起こした「七色粉白粉」。100年の時を経て、女性の心と肌を彩る

「七色粉白粉」の百周年記念複製版 「七色粉白粉」の百周年記念複製版

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100年前に発売された7色の白粉。先進的だった当時の活動をあらためて発信したい

--2017年元日にブランドSHISEIDOから、「七色粉白粉(なないろこなおしろい)」の「百周年記念複製版(数量限定)」と、7色の白粉が1つのコンパクトパウダーになった「資生堂 7ライト パウダーイルミネーター」が全国のデパートで発売されました。この2つの商品を開発した経緯について教えてください。

塚本:「一人ひとりの美しさを引き出す」という資生堂メーキャップが目指すものの原点にある「資生堂 七色粉白粉」が、今年で発売100周年を迎えました。それを機に、SHISEIDOブランドから2つの商品を発売することが決まりました。一つ目は、当時の七色粉白粉を現代女性の肌やライフスタイルに合わせてモダンに進化させたコンパクトパウダー。こちらはSHISEIDOのベースメーキャップを支えていくアイテムです。二つ目は、SHISEIDO独自の歴史や文化、先進性を伝えたいという想いから100年前に発売した「七色粉白粉」の複製版を数量限定でつくることになりました。

--白粉のカラーバリエーションがない戦前の時代に、七色粉白粉は7色も存在していたことに驚きました。

塚本:1917年当時は、日本にまだファンデーションというものが存在せず、肌づくりを担うスタイルといえば白粉が主流でした。ただ、白粉はもともとヨーロッパから伝わったもの。そのため、「日本人の肌の色に馴染む白さを」との思いから資生堂が1916年に、「かへで白粉」「やよい白粉」という2種類のやや黄味がかった色つき練り白粉を発売しました。そこからさらに考え方を深め、七色に進化させたそうです。また、当時はいまのように照明が明るくありませんし、蛍光灯の色も違ったはず。時代の環境に合わせて美しく見える肌を考えた結果でもあるのではないでしょうか。七色粉白粉のスタイルは、資生堂が「個の美」を演出する存在へと進化したきっかけになったのではないかと考えています。

--静岡県・掛川の「資生堂企業資料館」を訪れ、実物を参考に複製されたそうですね。

塚本:はい。複製するにあたって資料館に残されている数少ないオリジナルの七色粉白粉を見させてもらうことから始めました。資料館には、商品のほかに当時の広告や店舗で使用していた重厚な鋳造の販売台も残されていて、商品だけではなく、売り場づくりまで繊細にデザインされていたことがとても印象に残っています。100年前は7色をバラ売りしていて、お客さまの肌色や望む仕上がりに合わせて、カウンセリング販売をしていました。ちょうど現代のコントロールカラーのような考え方ですね。いまの白粉って最後の仕上げに使うイメージですが、当時はファンデーションのような役割。新橋の芸者さんから一般の人まで、幅広い方に親しまれていたようです。

--オリジナルの七色粉白粉のパッケージはどのようにつくられていたのでしょうか?

塚本:当時の七色粉白粉の容器はいわゆる布張り函。四角い箱の四隅を落として8角形にした骨組みを厚紙でつくり、そこにサテンの布を張り、表面張力のようにゆるやかに膨らませています。その容器の天面には金箔の花椿マークを押し、サイド正面には花椿マークの形をした金色の封緘シールが貼られていました。今回複製するにあたって、1917年に七色粉白粉の布張り函を製作していた日本の函専門メーカーとも協働したのですが、これらのプロセスはいまでは考えられないほど大変な手間と難易度の高い工程を経てつくられていることがわかりました。

--複製するにあたって、デザインなどで特に気をつけた部分はありますか?

塚本:このような商品を複製するにあたり、商品としての見栄えのクオリティーをなによりも大切にしました。同時に、発売当初の布の色や質感の再現は資料をもとに慎重に進めました。また少し専門的になりますが、容器のフレームを紙ではなく樹脂製にすることで嵌合の精度を高めたり、中味の品質保証をクリアするために別途コーヒーフレッシュのようなポーション容器を組み込んだりと、100年後のいまだからこそできる技術も取り入れています。

--当時の花椿マークは、金箔で押されていたそうですね。今回はどのように複製を?

塚本:複製版では、金の質感を再現するためにホットスタンプという技術で箔を押しつけています。でも、最初に用意した布とホットスタンプの箔の相性が悪くて(苦笑)。ホットスタンプと相性が良く、かつ当時の布の質感と色に近い生地を探すのにとても難航しました。

1917年発売された「七色粉白粉」パッケージ 1917年発売された「七色粉白粉」パッケージ

「七色粉白粉」の百周年記念複製版 「七色粉白粉」の百周年記念複製版

決定した生地とホットスタンプのサンプル 決定した生地とホットスタンプのサンプル

パッケージで使用している樹脂の骨組み パッケージで使用している樹脂の骨組み

複製版はやや小さめにリサイズしている。(右はオリジナルと同寸のモックアップ) 複製版はやや小さめにリサイズしている。(右はオリジナルと同寸のモックアップ)

1927年頃の「七色粉白粉」の店頭ポスター 1927年頃の「七色粉白粉」の店頭ポスター

当時の封緘シールを忠実に再現している
当時の封緘シールを忠実に再現している 当時の封緘シールを忠実に再現している

使い心地の良い大きさや封緘のロゴなど、細部までこだわりぬく

--7つの容器が横一列に並んでいる佇まいも素敵ですね。1917年はバラ売り、今回の複製版は7色セットということで、何か容器に変更点はあるのでしょうか?

塚本:7色セットでの販売ということで、7つの容器をどのようにセットするかについてもいろいろ検討を重ねました。結果、横一列に並べるレイアウトに落ち着いたのですが、横一列に並べることで、七色で一つのセットであるという特別感が演出できる一方、少し大げさに見えてしまったので、ほんの少しリサイズを行っています。オリジナルは約56ミリ角のサイズですが、複製板は52mm角とやや小さめです。ミニチュアに見えないギリギリのサイズ感を狙っています。

--封緘シールは7色でかわいらしいですね。

塚本:オリジナルは封緘シールが金色なのですが、今回はセットケースに横一列に並ぶということで、それぞれ中味の色をイメージして7色の封緘シールをあしらっています。セットケース内の配置は、資料館で見つけた広告を参考にして、同じ並び順にしています。当時の七色粉白粉の広告デザインは、いま見てもすごくモダンですし資生堂書体の配色も新鮮です。そのアイデアは複製版の外箱や紙袋に取り入れてみました。

--一つ気になったのが、複製版「七色粉白粉」の天面に押されたホットスタンプは「SHISEIDO TOKYO」となっていますが、封緘シールには「SHIMBASHI TOKYO」とあります。「GINZA TOKYO」ではないんですね。

塚本:いろんな方からその質問をいただきます。オリジナルが「SHIMBASHI TOKYO」と表記されていたので、そのまま再現してみました。なぜ「SHIMBASHI TOKYO」だったのか、僕も開発当時、気になってその理由を資料館の方にお伺いしたところ、現在銀座七丁目にある資生堂本社の地名が当時、「新橋」だったからではないかということでした。あわせて注目してほしいのは天面にも押されている花椿マーク。いまの花椿マークは7枚葉ですが、1917年当時は9枚葉だったんですよ。翌年にはいまの7枚葉のデザインに改定されていますから、大変貴重な時期の商品でもあります。

--言われてみると、いまの花椿マークとは印象が異なります。歴史を感じますね。

「七色粉白粉」を継承したパウダー。現代技術を用いて「7つの光」を表現

--続いてお聞きしたいのが、同日発売のコンパクトパウダー「資生堂 7ライト パウダーイルミネーター」。こちらはオリジナルの「七色粉白粉」の7色を再解釈して、現代女性の肌やニーズに合わせて作られたそうですが、コンセプトはどういったものなのでしょうか?

塚本:オリジナルの七色粉白粉から100年を経て、色を自由に取り入れてメーキャップを楽しむことが当たり前になった現代。女性が好む仕上がりのイメージも、昔は「隙のない仕上がりできちんと感を出す」というものでしたが、いまは「よりナチュラルな仕上がりで自分らしい肌を演出したい」に変わってきています。そのような嗜好の変化を反映し、現代版のコンパクトパウダーでは7つの色に加え、「7つの光」の力で一人ひとりの肌の個性を引き出す、ということをコンセプトにしています。

--こちらは、コンパクトの上面にある大きな花椿マークが印象的です。

塚本:オリジナルの七色粉白粉をイメージし、大胆に花椿マークをあしらっています。ブランド「SHISEIDOメーキャップ」のパッケージカラーに合わせて、フォルム全体は黒でまとめていますが、花椿マークが見える蓋の部分は、天板の裏側からホットスタンプを押しています。角度によってさまざまな色に光って見えるという、表情の変化を狙ったものです。また花椿マークの下にあるSHISEIDOロゴは、中味色の1つ、ピンクをあしらっています。

--8角形のシルエットも特徴的ですね。

塚本:これは七色粉白粉の100年後の姿をイメージしています。シルエットは七色粉白粉のエッセンスでもある8角形をベースにしています。いまを生きるアクティブな女性にふさわしく、常に持ち歩けるように可能な限りミニマムな設計を心がけました。

--7色のパウダー配置にもこだわりがあるのでしょうか?

塚本:マーケティング部の担当者ともよく話し合いながら、明るい色と暗い色のバランスと使いやすさに気を配ってレイアウトしています。コンパクト内のパウダー配置をどのような形に分割するかは悩みどころでした。光が乱反射しているかのような形状で、なるべくシンプルに色がはっきりと美しく見えるデザインを心がけました。

--黒のケースに抽象絵画を思わせるパウダー7色のコントラストが引き立っていますね。「七色粉白粉」と「資生堂 7ライト パウダーイルミネーター」、お客様にはどのように使ってほしいですか?

塚本:気分によって色を混ぜたり、色の使い方を変えたり、自分だけの楽しみ方を見つけてもらえると嬉しいですね。普段使わない色をあえて取り入れることで、いつもと違う自分に会えたりする。複製板もぜひ手にとっていただいて、現代まで受け継がれている資生堂の歴史や文化、商品に込めた想いを感じていただきたいです。100年前もいまも、商品を通して人が持つ個の美しさを大切にすること、そしてその個性を自由に楽しんでほしいという願いは変わらないと思っています。

「7ライト パウダーイルミネーター」商品 「7ライト パウダーイルミネーター」商品

複製版の七色粉白粉と同じ8角形に 複製版の七色粉白粉と同じ8角形に

Profile

塚本 康博(つかもと やすひろ) Designer
1983年香川県生まれ。広島市立大学大学院芸術学研究科造形計画修了後、2010年資生堂入社。現在グローバルSHISEIDO、ELIXIR、HAKUなどのパッケージデザインを担当。

Credit
CD
Ruba Abu-Nimah
AD
駒井 麻郎
D
塚本 康博
P
大畑 直也

クレジット表記について
  • CD: クリエイティブディレクター
  • AD: アートディレクター
  • D: デザイナー
  • C: コピーライター
  • P: プロデューサー
  • PH: フォトグラファー
  • PL: プランナー

クレジットは資生堂 宣伝・デザイン部のスタッフのみの掲載としております。

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