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Package Design 日々を丁寧に生きるミレニアル世代に贈る。生活者とともにつくり上げた新ブランド「レシピスト」

ミレニアル世代へ向けた新しいスキンケアブランド「レシピスト」 ミレニアル世代へ向けた新しいスキンケアブランド「レシピスト」

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「ミレニアル世代」ってどんな人たち?

--2017年11月1日、ミレニアル世代に向けたスキンケア&ボディケアブランド「レシピスト」が発売となりました。高品質と低価格の両立や、スマートフォンを積極的に使ったプロモーションなど、ミレニアル世代にふさわしい、新しい試みを感じさせる要素が多いと感じます。

長島:近年資生堂には、若い世代にしっかりと向き合ったスキンケアのブランドが存在していませんでした。いまの資生堂が持つ大きなミッションのうちのひとつとして、若い世代への求心力を高める必要もあり、今回の「レシピスト」の開発に至ったのです。

富士榮:20代前半を中心としたミレニアル世代の多くは、そこまで深刻な肌悩みを持っているわけではないものの、環境やライフスタイルにより時として急なトラブルに見舞われてしまうことがあります。そんな肌を、「キレイの基礎力」ある肌へと導くというのがレシピストのコンセプト。資生堂の技術を活かし、キイチゴやアプリコットなど、自然由来の成分を配合した設計になっています。

--若い世代に向けた商品開発を行うにあたって、どのようにマーケティングを行ったのでしょうか。

富士榮:ミレニアル世代の方たちのライフスタイルや嗜好を肌感覚で掴みたかったので、ターゲット層と合致する何人かの方に実際にお会いして、1対1で詳しくお話を伺っていくという手法をとりました。そのインタビューの内容が、商品に反映されているんです。それも、化粧品はパーソナルなもののため1回のお話で本音を引き出すのが難しく、3〜4回お会いするなかで、じっくりとインサイトを捉えていきました。

長島:通常の商品開発、マーケティングの推進においては、マーケティング部主導でブランドの骨子をつくってから、宣伝部のデザイナーがパッケージデザインをつくり、それからコミュニケーションチームが広告について考えていく......というように、それぞれのスペシャリストがバトンタッチしながら、自分の領域を担当します。

しかし今回は、ブランドのコンセプトづくりからわれわれ宣伝部のクリエーティブディレクター(長島)、ストラテジスト(富士榮)、デザイナー(川合、久我)が入り、一緒につくり上げていきました。

--そこで得られた「ミレニアル世代像」とはどんなものでしたか。

富士榮:まず、みなさん共通して自分の人生を楽しんでいます。自由に使えるお金は決して多くないけれど、夢中になれる趣味や人とのつき合いを大切にして、そのためにやりくりもポジティブに工夫されている様子が印象的でした。たとえば自転車通勤をしている人は、「節約のため」ということだけではなく「健康的だから」「朝、風を切って走ると気持ちがいいから」と考えたり。

スキンケアにかけるお金も多くはないのですが、一つひとつ吟味して丁寧に選び取ることを怠らない。そしてそれが、彼女たちの自分らしさやプライドにつながっているんです。単に「安い」というだけではなく、他のブランドとどこが違うのかをしっかり突き詰めなければ、選んでもらえないと思いました。

長島:これまで資生堂がマスに向けた広告やキャンペーンをするなかでは、あまり出会うことができていなかった人たちだと捉えています。実直に誠実に、毎日の暮らしのなかで食べるもの、着るものの一つひとつまで、手触り感のあるものや、信頼できる人からの情報を重視して選択している人たちだという印象を受けました。

--久我さんはまさにミレニアル世代ですが、モニターの方々に話を聞いてみてどう思いましたか?

久我:これまで「ミレニアルはこういう人」といった意識は特に持っていませんでした。これまでの人生で自然に身につけてきたことだったから......。今回お話を聞いて分析していくなかで初めて、言語化されて腑に落ちる感覚でしたね。

レシピスト「バランスととのう化粧水」と「しっかりうるおう化粧水」レシピスト「バランスととのう化粧水」と「しっかりうるおう化粧水」

モニターに候補として見せていた容器のグラフィックデザインモニターに候補として見せていた容器のグラフィックデザイン

パッケージのポイントとなるナチュラルなピクトは、ローズエキス、キイチゴエキス、ハトムギエキスなど、各商品に含まれる天然成分を表している パッケージのポイントとなるナチュラルなピクトは、ローズエキス、キイチゴエキス、ハトムギエキスなど、各商品に含まれる天然成分を表している

ユーザーとともにつくり上げた、シンプルで温かみのあるデザイン

--商品のデザインについては、どのようにインタビューを行ったのですか。

川合:パッケージを構成するあらゆる要素を、「世界観」「容器の形状」「キャップの形状」「色」「グラフィックデザイン」などに細分化し、一つひとつについて複数の選択肢から好ましいものを選んでもらい、嗜好を紐解きながらデザインに落とし込んでいきました。たとえばパウダールームのインテリアイメージを複数見せながら、「どの空間でスキンケアをしたいですか」と尋ねたり、何も書かれていない、まっさらな化粧水ボトルの形状サンプルを複数用意して「どれが好きですか」と質問したり。

彼女たちはどの質問にも、はっきりと自分の意見で答えてくれましたね。たとえばボトルの形状なら、堅実に自宅の収納棚のサイズと照らし合わせて「底面積が少ないほうが場所をとらなくていいんです」といった感じでした。思いがけない発見も多数あったので、「若い人たちはこうなんじゃないか」と立てていた仮説や固定概念は常に疑いながら、モニターの方々と一緒に一からつくり上げていくような感覚で、デザインを組み立てていきました。

--シンプルで上質感のあるデザインに仕上がっていますが、商品はどれもかなりの低価格。使える素材など、デザインするうえでの制約もあったのではないですか?

川合:外装コストを抑えることはミッションとして決まっていたので、むしろその制約を逆手にとって、これまでになかったようなものがつくれないかと試行錯誤しました。素材に練り込む顔料の構成比にこだわったり、削ぎ落とすところのメリハリをつけたりと工夫しましたね。

幸いミレニアル世代の特徴として、シンプルであることをマイナスには捉えないということも、インタビューのなかで見えていました。彼女たちにとって「シンプル」は、「無駄が削ぎ落とされたもの」というだけではなく、「使いやすさや中身にこだわっているもの」という誠実なイメージへとつながり、むしろ魅力として感じられるものだったのです。

--デザインは、シンプルだけでなく、ナチュラルなものに仕上がっていますね。

川合:「シンプル」と「ナチュラル」の2つのイメージが合わさったものにはさらに好感を抱く、という人が多かったためです。そこで、シンプルななかにも温かみを感じるデザインにし、商品に含まれる天然成分を表したローズやハトムギなどのピクトグラムには差し色を入れて、「使うことで少し気持ちが上がる予感」を表現しました。

--ミレニアル世代を語るうえで欠かせない「デジタル」との親和性について、デザインではどのように追求されましたか?

川合:ECサイトやスマートフォンでの見え方にこだわるため、ピクトグラムのデザインは、小さな画面で見ても識別しやすいように検証を重ねました。また、シンプルなデザインを追求するため、表面からは思い切って日本語を外しています。通常「レシピスト」の価格帯では展開がドラッグストア中心となるため、表面に「化粧水」「しっとり」「天然成分配合」などの訴求内容がわかりやすく記されていないと店頭で目立たず、手に取ってもらいにくいのです。

しかし「レシピスト」の販路はEコマースが主体なので、パッケージに記載せずとも、モニター上で特徴を訴求できます。モニターへのインタビューでも訊いてみたところ、「日本語が入っていないほうが気分が上がる」という見解だったので、見え方を優先することに踏み切れました。

ライフスタイルに寄り添いながらブランド価値を高めていく

--ミレニアル世代のユーザーとともにつくり上げていく今回の手法、振り返ってみていかがですか。

川合:大変なこともありましたが、一つひとつのものごとに対してしっかりと自分の意見を持って選び抜く、というミレニアル世代の感覚は、今回の手法、そしてレシピストというブランドととても相性がよかったと思います。彼女たちが堅実で客観的な意見をくれることで、一つひとつに根拠と確信を得ながら、自信を持って進めていくことができました。

また、ユーザーと一緒に少しずつかたちにしていくという感覚だったので、常に最終ゴールが見えない手探りの状態で、ワクワク感もありましたね。通常は仮説に基づいてデザインを進め、完成間近で嗜好調査を行います。ときにはそこで大きな方向転換となってしまうこともありますが、今回そういうこともなかったですし。デザイナーが一人で抱えてつくり込んでいくのではなく、ユーザーの声を聞きながらつくっていくことの大切さを教わりました。

富士榮:側で見ていて感動しました。他者に委ねることって、デザイナーにとっては賭けですよね。仕上がりがまったく未知数の状態から、一つひとつのリアクションをパズルのようにはめてつくったものが、最終的にはこんなに新しい発想の素敵なデザインに仕上がって......。すごい仕事を見せてもらったなという感じです。

--発売前の8月中旬には、1万人にサンプリングを実施し、2週間の試用モニター後に価格を予想してもらうキャンペーンを行っていましたね。実際の価格が590円であるのに対し、平均予想価格は1,784円でした。

長島:今回Eコマースを中心にしたマーケットに新しいブランドとして参入するなかで、ファンになってもらいたい人々のあいだにどうやって認知を広げるか? というのが、ひとつの課題としてありました。ブランドが本当に大切にしているスキンケア理論や成分の説明をしても、特に生活のなかのスキンケアの優先順位が高くない若い女性にはなかなか興味を持ってもらえないだろうと。1万人モニターキャンペーンも、そんな試みのうちのひとつだったんです。

富士榮:「驚きの安さ」といった、単純に価格にフォーカスしたアプローチにはしたくなくて。きちんとモニター期間を設けて、使って肌や心で実感していただくことで、中身やクオリティーのほうに光を当て、「この使用実感なのにこの価格は驚き」「これを選ぶのは賢い」という感じ方をしてもらうことにこだわりたかったんです。

--「レシピスト」の価値を、これからミレニアル世代の女性たちにどうアピールしていきたいですか。

長島:彼女たちの生活の中心にあるのはやはりスマホですから、親和性の高いコンテンツを定期的に仕掛けていければと思っています。その際に大切にしたいのは、「レシピスト」というブランド名に込めた「生活を、ちょっと自分らしくつくる、そのアイデアを提案できる人」という姿勢。たとえば生活のなかで気持ちがあがる、役に立つちょっとした「アイデア=レシピ」を提案していくなど、単純に「ものがいい」「コスパがいい」ということではなく、ブランドが大切にしているライフスタイルのあり方がしっかりと伝えられるようなコミュニケーションを、ユーザーの反応を見ながら進めていきたいですね。

レシピストのTwitter公式アカウントレシピストのTwitter公式アカウント

Profile
長島 康之(ながしま やすゆき) Creative Director
1990年入社。営業、商品開発・マーケティングを経て、2009年に宣伝・デザイン部に異動。
富士榮 史(ふじえ ふみ) Creative Strategist
2001年入社。営業部門勤務を経て2010年宣伝・デザイン部に異動。
川合 加奈子(かわい かなこ) Art Director
宣伝・デザイン部 アートディレクター。デザイン会社などを経て2005年資生堂入社。エリクシールのパッケージデザイン、アートディレクションを担当。
久我 遼祐(くが りょうすけ) Designer
宣伝・デザイン部デザイナー。2016年東京藝術大学デザイン科卒業後、同年に資生堂入社。現在エリクシール、レシピストを担当。
Credit
CD
長島 康之
ST
富士榮 史
AD
川合 加奈子
D
久我 遼祐

クレジット表記について
  • ECD: エグゼクティブ クリエイティブディレクター
  • CD: クリエイティブディレクター
  • AD: アートディレクター
  • D: デザイナー
  • Copy D: コピーディレクター
  • C: コピーライター
  • P: プロデューサー
  • PH: フォトグラファー
  • PL: プランナー
  • ST: ストラテジスト

クレジットは資生堂 クリエイティブ本部のスタッフのみの掲載としております。

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