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Technology 働く女性を応援する自動メークアプリ「TeleBeauty」開発秘話

自動メークアプリ「TeleBeauty」のコンセプト映像 自動メークアプリ「TeleBeauty」のコンセプト映像
M働く女性を応援する自動メークアプリ「TeleBeauty」開発秘話

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社会の役に立つコミュニケーションツールを作りたかった

--自動メークアプリ「TeleBeauty(テレビューティー)」の開発が発表されました。日本マイクロソフト協力のもと、オンライン会議などの画面に表示される顔に、デジタル処理でメークや顔色補整を行うことができるという画期的なアプリですが、開発の始まりはいつごろで、何がきっかけだったのでしょうか?

花原:企画の始まりは昨春頃です。きっかけはデザイン視点の発想で世の中の課題を解決したり、誰かの役に立つ方法でコミュニケーションを作れないかという想いからでした。そこで、在宅勤務の人や視覚障害を持つ人、LGBTの方など、マイノリティーの人々に対する企画を博報堂ケトルさんと出し合い、議論したなかで生まれたアイデアです。

加賀谷:そのなかでTeleBeautyを開発することにしたのは、やっぱりメーキャップというところが決め手で。資生堂らしさを出せるかもしれないっていう。

花原:と同時に、これから働き方が大きく変わっていくなという見解もあり、時代に適応したメークのあり方を提案するという意図もありました。

--システム開発を担当した加賀谷さん、花原さんにお聞きしたいのですが、このアプリケーションはどのように作られたのですか?

加賀谷:メーキャップシミュレーター自体は、資生堂がもともと「ミライミラー」というサービスを開発していたので、その技術を応用することができたのですが、TeleBeautyはネットワークに接続して、相手側にもメーキャップ済みの映像データを送らなければいけないので、その技術開発とUI(ユーザインタフェース)開発を進めていったのが第一段階でした。そのときは、人の動きにメーキャップが追いつかないなど、アプリの精度が低く、課題も多くて。当時は日本マイクロソフトさんのプラットフォーム「Skype for Business」への対応が確定していなかったので、どのように普及させようかと、いろいろな段取りが整っていない状態でした。

--技術開発は、資生堂が行っているんですね。てっきり日本マイクロソフトの開発かと思っていました。

花原:やっぱりそういうイメージですよね(笑)。資生堂は化粧品会社だからそういう技術を持ってないだろうっていう。

加賀谷:開発に関しては、宣伝デザイン部がテクニカルな部分も含めてディレクションしましたし、UIの追求も行ってきたんです。

--企画を知った日本マイクロソフトの反応はいかがでしたか?

片岡:Skype for Businessを担当なさっている執行役員の方からは、「いままでの在宅勤務やテレワークは政府が声がけをして、一生懸命推進させてきたものの、いまいち実態が伴ってこなかったが、TeleBeautyはそこに実態を作るものだ」とおっしゃっていただきました。さらに「資生堂さんならではのアイデアで、思いつかなかった」とも。

TeleBeauty開発のきっかとなった、1年前の紙資料 TeleBeauty開発のきっかとなった、1年前の紙資料

TeleBeautyのコンセプト映像には働く女性の顔が並ぶ TeleBeautyのコンセプト映像には働く女性の顔が並ぶ

メーキャップのパターンは簡単に選択できる メーキャップのパターンは簡単に選択できる

ロゴは繊細さを持つ書体を制作して、女性らしさを表現 ロゴは繊細さを持つ書体を制作して、女性らしさを表現

テレビ会議でも、きちんと顔を見て話すとコミュニケーションの深度が違う

--画面デザインにはどんなこだわりを持って取り組んだのでしょうか?

花原:女性がメークをするときのワクワク感や高揚感みたいなものを演出できるデザインにしたいと思いました。普段のSkype画面はシンプルでビジネス寄りの印象なので、そこにちょっと華やかさをプラスするというか。あえて繊細な書体を使ったり、背景にはメークを想起させるようなカラーで女性らしさを意識したデザインにしています。

宮澤:画面を見るだけでも気分が高まるように、背景はカラフルなものを提案しました。また、メークパターンをセレクトして画面が切り替わるときに一瞬ホワイトアウトしてからメークが施されることでちょっとした「変身気分」が味わえたりと、細かい部分にまでこだわっています。

加賀谷:後で検証してわかったことですが、テレビ会議のときに、チャットだけ、音声だけで利用している人がすごく多かったんですね。でも、きちんと顔を見て話すとコミュニケーションの深度が違うし、相手に理解される情報量に雲泥の差がある。ネットワーク上でも顔を突き合わせることの意味がメークを通して感じられる、そのきっかけをTeleBeautyが担えるのではないかと強く感じています。

--メークは4パターンのなかから選択できるようになっていますが、それはどのように決定されたのですか?

加賀谷:最初はもっとバリエーションが多かったんですよ。派手めのメークや、歌舞伎メークなんていう遊びもあったんですけど(笑)。実際にヒアリングしていくとナチュラルな感じがいいという声が多かったので、普段の勤務中くらいのナチュラルメークを意識して、社内のメーキャップアーティストに提案してもらいました。

花原:メークや背景ぼかし機能よりも大変だったのは、顔の明るさ補正でしたね。画面に映し出される画像ってカメラによって全然見え方が違うので、メーカーごとに何台も検証をして。一つの目安を決めて、そこに向かって補正をかけていき、最終的にはどのパソコンでもバランスよく見える明るさを目指すまでが一番苦労したポイントかもしれません。

加賀谷:でも、そこが気づきでもあって。じつはパソコンのカメラ設定でもある程度、明るさを調整できるんですよ。けど、そんな面倒なことは誰もしないですよね? それがアプリケーションを立ち上げただけでできるっていうのは、TeleBeautyの最大の特徴だと思います。

世界中の働く女性が自分らしく仕事をするために

--TeleBeautyの開発は資生堂のなかでどのような位置づけになりますか?

小助川:弊社の場合、ビューティークリエーションセンターという、ヘア&メーキャップアーティストがメークのテクニックを開発する部署があります。それだけではなく、IT技術の専門部署や、メーキャップシミュレーターの開発部署もある。今回はそれら多くの力を結集して開発した形になりました。TeleBeautyでは社会に対してビューティーが貢献できるツールとして、新しいコミュニケーションが生み出せたんじゃないかな、と。

加賀谷:それから、コンセプト映像を作れたことも大きいです。ただメークができるということだけでなく、このサービスがどういう定義で、何を目的として開発されたのかを、きちんと伝えられたのもよかったなと。テレビ電話の利用はもちろん国内外問いませんし、いまや世界中でリモートワークをする機会が増えているので、映像のナレーションは英語にしています。海外の人にも興味を示してもらえるように、海外のネイティブな社員にもヒアリングをして練っていった感じですね。

--そういう意味では、宮澤さんが考案した「TeleBeauty」というネーミングも絶妙ですね。

宮澤:「テレワーク」は海外で浸透していますが、日本の企業で取り入れているところはまだ少ないうえに、在宅勤務をテレワークと呼ぶことを知らない人も多い。テレワークの「テレ(Tele)」は、遠く離れたという意味で、そこに「Beauty(ビューティー)」を結びつけることで、アプリの価値やイメージが正しく・スピーディーに伝わればと考え、このネーミングにしました。

--今後の展開はどのようなものを想定していますか?

加賀谷:Skype for Businessに正式対応されましたが、いまはまだ試用段階です。TeleBeautyは何よりもみなさまに使ってもらうことが大事なので、使用された体験者の意見を反映して、よりブラッシュアップする必要があると思っています。より多くの方に利用してもらえるように取り組んでいきたいですね。

コンセプト映像では、働く女性の様子も伝えている コンセプト映像では、働く女性の様子も伝えている

Profile

(左から) 小助川 雅人(こすけがわ まさと) Creative Director
1991年資生堂入社。3年間の営業経験を経て、CMプランナーとしてクリエーティブ職に。HAKU、FWB、ワタシプラス、椿の夢などを担当。

加賀谷 のどか(かがや のどか) Digital Director
多摩美術大学卒。広告代理店でデジタルコミュニケーションのプランナーとしてクリエーティブの企画・開発などに携わる。2015年より資生堂宣伝・デザイン部に在籍。コミュニケーション設計・企画・開発の推進をおこなっている。

片岡 まり(かたおか まり) Department Manager
慶應義塾大学文学部美学美術史専攻を卒業後、資生堂入社。国際事業、商品開発、事業・販売部門、お客さまセンター、経営企画、CSR部門等を経験後、2014年より現職。

宮澤 ゆきの(みやざわ ゆきの) Copy Writer
2010年入社。2013年から1年間、Web制作会社へ出向し、デジタルコミュニケーションの基礎を学ぶ。主な仕事は「インテグレート」「エリクシール」「dプログラム」など。

花原 正基(はなはら まさき) Art Director
2005年入社。マキアージュ、Global SHISEIDOブランドのアートディレクションを担当後、現在はデザインとテクノロジーを掛け合わせて新しい価値を生むプロジェクト「Design R&D」を進行中。

Credit
CD
小助川 雅人
AD
花原 正基
C
宮澤ゆきの
DM
片岡 まり
DD
加賀谷 のどか

クレジット表記について
  • CD: クリエイティブディレクター
  • AD: アートディレクター
  • D: デザイナー
  • C: コピーライター
  • P: プロデューサー
  • PH: フォトグラファー
  • PL: プランナー

クレジットは資生堂 宣伝・デザイン部のスタッフのみの掲載としております。

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