企業広告

縮小
縮小
2014年7月 雑誌広告<br/>美しき挑戦者たち<br/>「髙梨沙羅×山田いずみ」篇
2014年9月 雑誌広告<br/>美しき挑戦者たち<br/>「桐野夏生×田北志のぶ」篇
2014年11月 雑誌広告<br/>美しき挑戦者たち<br/>「田中優子×阿部佳」篇
資生堂トークセッション「美しき挑戦者たち」vol.1
鍵屋十五代目 花火師 天野安喜子 × 酒造会社 商品開発 デーナ・ベルテ
伝統文化の壁、職人の世界
天野 私は昔、祖母から「女性は不浄のものだから、火の神が宿る現場に入ってはいけない」と言われていました。20代で外の会社に修業に出たときも、手取り足取り教えてくれる世界ではないので、職人さんが席を外した隙に花火玉を触ったりして、技術は体で覚えましたね。
ベルテ 日本酒の世界も昔は厳しかったようですが、いまは女性だから蔵に入れないということはありません。杜氏さんも新鮮に感じているみたいで、「女性の感覚はどうなの?」と聞いてくれたり、自分が思っていたよりもスムースに受け入れてもらえました。社外の人から、「女性が入っちゃいけないんでしょう?」と聞かれることがありますが、菊水酒造は違いますと自信をもって言えますね。そもそも、菊水を選んだのは女性が活躍している会社だったからなんです。
天野 花火というのは美しさだけを追っていくものではなくて、危険との隣り合わせの仕事。現場でいろんな問題を解決して初めて花火師として認められるんです。現場に出るようになった最初の頃は、職人衆にも「なんでおまえの指示を受けなきゃいけないんだ」という空気がありました。でも、ある現場で責任者としてトラブルを乗り越えたとき、ようやく職人たちと心が通じ合ったのを覚えています。職人の世界のいいところは、心と心が通じ合ったら離れないこと。「こいつのためにやってやろう」と意気に感じてくれます。
自分の道を選ぶ
ベルテ 私は子どもの頃から冒険好きな性格で、ずっと海外に行きたいと思っていたんです。2つの言語をしゃべれるようになりたいなと思って、ハイスクールではスペイン語を勉強しました。そして、大学に入ってからは日本語。
遠い国に住んでみたいという思いは、日本に来たことでかなえられましたけど、日本酒の仕事にたどり着いたのは本当に偶然。10歳の頃の自分に、「あなたは30歳になったら日本の高知県でお酒を造っているよ」と言っても、信じなかったでしょうね(笑)。
日本には真剣に何かに取り組んでいる人が多いし、深くいろいろなことを追求できる文化もあるので、そういう環境の影響も受けて、日本酒というテーマにどんどんはまっていったんだと思います。
天野 私は鍵屋に生まれたから、そのまま花火師になったというわけじゃなくて、自らこの道を選んだんです。というのも、小さい頃から父にすごく憧れていて、父のようになりたいと思っていたんですね。父が花火師だったので花火師になり、父が柔道をやっていたので柔道もやりました。もし父が杜氏だったら迷わず杜氏をめざしていたと思います。小学生の頃から目に映る父の姿がかっこよくて、母がいつも「素晴らしい人なのよ」と言っていたので、その暗示もあったんでしょうね(笑)。よくお父さんみたいな人のお嫁さんになりたいという女の子がいますけど、私の場合は自分自身が父のようになりたかった。
いざ現場に入ってみると、オーラというのか、あらためて父の凄さに気づきました。たまたま責任者が体調を崩して、私が急遽責任者になったことがあったんです。通常じゃ解決できないようなトラブルに対処できたとき、私はきっと十五代目になるために生まれてきたんだと感じました。もう逃げちゃいけない──そう思った瞬間が20代半ばにあって、それからは覚悟が固まりました。
日本人の美学
天野 日本の花火の楽しみ方って、間と侘び寂びを大事にするんですよ。ドンと音がしてから、花火が開くまでの時間を「まだかな……」と期待して待つ間。開き終わった後も残像を楽しむ感覚。目に見えないものにも魅力を感じる文化なんでしょうね。お客さんが一発一発を愛でてくれるから、職人もとことん精魂込めて花火玉をつくる。私たち花火師は0コンマ何秒かのタイミングに命を懸ける。本当に微妙な違いなんですけど、そのこだわりが日本人の美学であり、プロ意識なんだと思います。
ベルテ 日本文化は全般的にこだわりがあって、技術が高いなと感じます。質にすごくこだわって、技術をどんどん磨いて、世界一になるまでがんばって仕上げる。
作る側だけじゃなくて、日本酒を飲む人、花火を見る人にも、こだわりがあるじゃないですか。いいものに囲まれているからかもしれませんが、日本人は質のいいものをいつも探しているんじゃないでしょうか。
インスピレーションを受ける瞬間
天野 私がインスピレーションを受けるのは自然界からなんです。たとえば、雷がドーンと鳴ったとき、怖いと同時にその力強さに感動しますよね。そのときの感情を自分の中にストックしておくんです。その感情のストックをポンッと弾いてやると、バーッと泉のようにアイデアが浮かんでくる。それを絵コンテに描きながら、演出を組み立てていきます。鍵屋では同じ花火大会でも毎回ひとつとして同じ演出はありません。
だから、アイデアを集めることよりも、自分自身の喜怒哀楽の感情を日頃からものすごく鍛えていますね。自然に対する驚きをはじめ、原始的な感情が自分の中で響くようにしておくんです。
ベルテ 私も好きな仕事をしているので、ときには10時ぐらいまで、カクテルのレシピを研究したり、ラボで夜中まで作業しているときもあります。夢中になって時間を忘れるのも楽しいですけど、毎日残業が続くと能率が落ちるので、できるだけスケジュールを立てて、朝にその日の一番大事な仕事をするように心がけています。そうすると、同じことを夜にやるよりもはるかに短時間でできます。人間の脳っておもしろいですね。
女性社会と男性社会
天野 私は生まれ変わっても女性になりたい。男性社会で仕事をしていると、女性は手を差し伸べられる機会が多いんです。でも、仕事を始めた最初の頃は助けを求めず力仕事もぜんぶ自分でやっていました。でも、ある年齢になって、男性と同じように働いていると摩擦が生じるということに気づいたんです。それからは、差し伸べてくれた手に自然と「お願いね」と言えるようになりました。
ベルテ 私もよく女性に生まれてよかったと思います。ときどき男性は楽でいいなと思うこともありますが、タイムトラベルして昔の女性として生きることになったら、アメリカでも日本でも難しいでしょうね。いろんな人の努力のおかげで女性が生きやすい時代になって、ありがたいと思います。いま自分の人生を女性として生きられることに喜びを感じます。男性には分からない女性だけの世界もありますし、女性でなければできないこともたくさんありますから。
挑戦は続く
天野 個人としては自分の内面を磨くこと。花火師としては、いつも危機意識をもって前に進んでいくことだと思っています。
ベルテ チャレンジというのは、難しくても自分が絶対にやるべきだと思うこと、生きているかぎりやらなければならないと感じることを、やり続けることだと思います。
天野 十五代目を襲名して父から印半纏を渡されたときに「十五代目として何かを残せよ」と言われたんです。花火を形作る要素には、色と形と音があります。なかでも私は音に魅了されているので、リズムも含めて、「十五代目の花火は音がよかったね」と言われる表現を作っていきたいですね。
ベルテ 私は日本酒とリキュールの商品開発で自分の技術をどんどん高めていきたいですね。たぶん人生を通したチャレンジになると思います。周辺のことを勉強したり、利き酒ももっと勉強したり、幅を広げたいと思います。