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2016年6月 雑誌広告<br/>ONE on ONE<br/>ゲスト:澤 穂希
2016年8月 雑誌広告<br/>ONE on ONE<br/>ゲスト:宮脇花綸(フェンサー)
2016年10月 雑誌広告<br/>ONE on ONE<br/>ゲスト:宇佐美里香(空手家)
いい顔に迫る資生堂クロストーク「ONE on ONE」vol.1
柔道家 野村忠宏 × 女優 二階堂ふみ
未来の自分に期待する
二階堂 野村さんは昨年、現役を退かれたばかりなんですよね。長い間、本当におつかれさまでした。
野村 ありがとうございます。最後のほうは怪我が多くて、もう身体がボロボロでしたから、今はちょっとホッとしています。
二階堂 小学生のころ、野村さんがオリンピックで3連覇するのをテレビで見ていて、すごく盛り上がったのを覚えています。私は沖縄出身なんですけど、実は子どものころ空手を習っていたんです。
野村 そうか、沖縄といえば空手が盛んですもんね。
二階堂 ただ、私がやっていたのは型の演武なので、自分と向き合う感じだったんです。同じ武道でも、柔道のように組み合って戦うというのは、どういう感覚なんだろう? 相手の動きを読む心理戦のようなところもあるのかな? と興味があって。
野村 そうですね。柔道では絶えず相手を感じていなきゃいけないんです、組んだ瞬間に感じる圧力で、相手の強さもわかります。トップレベルになると、何かを狙っているだけで、すぐに伝わるから、「今だ!」と思った瞬間には、もう投げてないとダメですね。
二階堂 野村さんといえば、背負い投げというイメージがあります。
野村 とにかく自分は背負い投げという技が好きだったんですよ。家が道場をやっていたこともあって、3歳で柔道をはじめたんですけど、子どものころは身体が小さくて、中学に入ったときも体重が30㎏ぐらいしかなかった。当時は女子の選手に負けるぐらい弱かったんです。
二階堂 えっ、そうなんですか!? 信じられない。
野村 いくら努力しても勝てない時期が続きました。やっぱり勝負の世界ですから、まわりは「そのとき強いかどうか」しか見ない。その中で弱い選手だということは自分でもわかっていました。でも、諦めたくなかったんです。今は弱いけど、とにかく好きな背負い投げを一生懸命磨いていけば、いつかは強くなれるんじゃないか。そうやって未来の自分に期待し続けたんです。
二階堂 すべてをプラスに変えていく精神力がすごいですね。
野村 現実は見なきゃいけないけど、それと同じぐらい未来も見よう。その未来をいいものにするために、今日を大事にしよう。そうやって努力できたことが、自分の強みだったのかもしれません。
オリンピックのプレッシャー
二階堂 スポーツ選手というと、私たちとは根本的に違う特別な人というイメージがありますけど、やっぱり最初から強い人っていないんですね。
野村 自分の弱さを知って、それを受け入れた上で、どう行動していくのか。大事なのは自分と向き合えるかどうかですよね。努力を続けていけば、ちょっとずつだけど、自分が強くなるのがわかります。技術だけじゃなくて、心が強くなったと感じる瞬間もある。その積み重ねだと思います。
二階堂 そうやって鍛え上げた自分を、海外のぜんぜん違う環境に行って試すわけですよね。しかも、オリンピックでは、日本というものを背負うわけじゃないですか。そのときの精神状態ってどういうものなんですか?
野村 オリンピックは4年に1回しかないという面でやっぱりすごく特別な舞台です。日本中の選手が、そこをめざして4年間努力してきて、出られるのは一階級につき一人だけ。しかも、本番ではそういう連中が世界中から集まってくる。目的はチャンピオンになることで、シンプルなんですけど、日の丸を背負うプレッシャーはすごく感じます。とくに柔道の場合は、日本で生まれたものだから、背負うものが大きい。自分の夢への挑戦ではあるんだけど、恐怖、プレッシャー、孤独が絶えず付きまといました。
二階堂 野村さんのように3連覇した人でも、やっぱりそれだけのプレッシャーを感じるんですね。
野村 前日はほとんど眠れなくて、2、3時間、寝たか、寝ないかという感じです。得意技で一本勝ちしているところや、世界一になるシーンをイメージするんだけど、ふと気を抜くと、もう負けてる自分しかイメージできない。だから、相手との戦いもあるけど、それ以上に自分の弱さとの戦いも大きいんです。試合を楽しむという感覚はいっさいないですね。
二階堂 さすがに私はそこまでのプレッシャーは感じたことないです。
野村 勝ってチャンピオンになると、別の悩みも出てきます。ライバルから研究されるから、さらに成長しなきゃいけないし、まわりの期待もどんどん高くなる。それがしんどくなって、2連覇したあと、いちど柔道から離れて、アメリカに留学したんですよ。そのとき、いろんな出会いもあって、新たに見えてくるものがあった。そういう時期を乗り越えたから、3連覇できたんだと思います。
自分の道を作る
野村 スポーツは勝つか、負けるかだから、評価がはっきりしているけど、演技の世界はそうじゃないですよね? 役者さんって、どんなふうに目標を立てて、判断していくんですか?
二階堂 そこが難しいんですよね。撮影現場でいろんな奇跡が起きて、自分の中では「よかった!」と感じても、仕上がった映像を見ると、それほどじゃないことがあります。逆に、自分では「だめだった」と思っても、編集ですごくいいものに仕上げてもらえることもあります。俳優の演技だけじゃ判断できないんです。そもそも、人の感情と向き合う仕事だから、作品を見て響く人もいれば、響かない人もいます。お客さんの反応は十人十色だから、何が成功かというのは、私にもまだよくわからないんです。
野村 きっと現場では、すごい監督や役者さんに囲まれるんですよね? 自分はビビリなほうなんですけど、二階堂さんはそういう状況で、自分をガッと出せるタイプですか。
二階堂 初めて行った海外がイタリアのヴェネチア国際映画祭だったんですけど、まわりは完璧な役者さんでいっぱいなんです。きれいで、背が高くて、もちろんお芝居もうまくて、すでにいろんな賞をとっている人たち。そういう方が、映画祭やオーディションには大勢来ます。正直、その中でビビってしまう自分もいます。でも、落ちついて「私がほんとにやりたいことは何なのか」ということを突き詰めていくと、余計なことが気にならなくなっていくんです。これは興味があるけど、あれは興味がない。これは素敵だと思うけど、自分がやらなくてもいい。まだ21年しか生きてないですけど、その中でもちょっとだけ大人になって、余分なものをそぎ落とせるようになってきた感覚があります。
野村 自分の道、自分の作り方を見出していくということですよね。最初は指導者からああしなさい、こうしなさいと指示される。そこで努力を重ねる中で、徐々に自分の道を見いだしていく。それができる人間がやっぱり一流になり、超一流になっていくんだと思います。
二階堂 野村さんは練習の中でそれを掴んだんですね。
野村 自分は「練習嫌い」を公言していましたけど、それでも、毎日メチャクチャがんばって練習しました。夢があったからですよね。無駄な努力もいっぱいしたけど、だからこそ、ほんとに自分に必要なものが見えてきた。それでも間違った道に行きかけることがあります。そういうときに自分を正してくれる人との出会いも大切ですよね。出会いに恵まれなきゃ、ここまで来られなかったと思います。
二階堂 どんな人たちですか?
野村 1人はうちの親父です。それから、大学時代の先生。いつも自分を見てくれていて、悩んでいるとき、迷っているときに、ひとこと言葉をかけてくれた。その言葉の意味に気づいたとき、自分は変わることができたんだと思います。二階堂さんにもそういう人っていませんか?
二階堂 私の場合、初めての映画で、録音技師の弦巻裕さんからかけてもらった一言が心に残っています。まだ映画の現場のことが何もわからなくて、とにかく自分の100%を出そうと、毎日いっぱいいっぱいになっていました。そしたら、弦巻さんが「日によって30%のときと、100%のときがあるというのはダメなんだ。毎日70%出せれば、それでいいんだよ」と言ってくれたんです。それは大きかったですね。
野村 いい言葉ですね。
二階堂 他にも、たくさんの方からいろんなことを教えてもらいました。それがずっと受け継がれてきたのが、映画の歴史なんでしょうね。バトンを受け取りつつ、自分たちも新しいものを生み出していかなきゃいけないなと思います。
映画には監督がいて、カメラマンがいて、録音技師がいて、俳優がいて、他にもたくさんの人が関わっています。そして、何もないゼロのところから、みんなでいっしょに1つの作品を作っていく。それぞれの分野で譲れないところもあって、たまにぶつかることもありますけど、最終的には〝同志〟になれる。本当におもしろい仕事にめぐり逢えたなって思います。
次のゴールに向けて
野村 自分も、柔道とめぐり逢えたのは幸せだったなと思います。結局、40歳まで現役を続けましたけど、振り返って見ると、山あり谷あり、平坦な道のりというのは一度もなかった。ゴールに辿り着くと、それは通過点に変わって、また新しいゴールができる。その繰り返しでした。
二階堂 競技から離れて、次のゴールというのは、もう見えているんですか?
野村 今まで、ほんとに柔道一筋で生きてきて、強くなるために関係ないことは一切してこなかったんです。だから、これからはもうちょっといろんな人と会って、世界を広げていきたいと思っています。だから、こうやって二階堂さんと話すというのも、自分にとっては新しいチャレンジの一つなんですよ。
二階堂 そう言っていただけるとうれしいです。今年はオリンピックもありますよね。
野村 そうですね。リオに懸ける選手たちの思いを伝える仕事もしていきたいと思っています。勝って夢をかなえる選手はひと握りです。でも、それ以外はみんな敗者かというと、そんなことはない。それまでの努力、流した汗は、みんな本物だと思うんです。そういう部分を伝えていきたいですね。
二階堂 柔道の指導はなさっていくんですか?
野村 ありがたいことに、海外から「野村の柔道の心を教えてほしい」という話をいただくんですよ。何かしらプロジェクトを立ち上げて、大きなチームから、田舎の小さい町まで、いろんなところを回っていけたら……と考えています。子どもたちと柔道をするのは、自分も楽しいですしね。
二階堂 素敵ですね。そこからまた新しい感覚も生まそう。
野村 さらに、それを日本に持ち帰って伝えることができたら理想的ですよね。だから、やりたいことがいろいろあって、今はワクワクしているんです。
二階堂 今日は、スポーツ選手の鍛え抜かれた精神力、自分と向き合う姿勢について、たくさんお聞きすることができて、とてもいい経験になりました。ありがとうございます。
野村 こちらこそ、お話しできてよかったです。いろんなものを経験しよう、吸収しようという真摯さは、役者さんも柔道家も共通するところがあるんだなと感じました。これからますます輝いて、素敵な女優さんになっていってください。期待しています。
二階堂 がんばります!