第1回 shiseido art egg賞

様ざまな芸術ジャンルで活躍する3人の審査員が、資生堂ギャラリーの空間に果敢に挑み、新しい価値の創造をもっとも予感させる展覧会を選び、shiseido art egg賞を贈ります。
受賞者には、記念品と賞金20万円が贈呈されます。

第1回shiseido art egg賞は平野薫展に決定いたしました。

平野薫展 《aerosol》 2007年1月12日~2月4日

平野薫展

4月4日に行われた授賞式において、平野さんには前田社長より記念品および賞金20万円が進呈されました。

授賞式
平野薫

受賞の言葉

今は嬉しさ以上に驚きの方が大きいです。 資生堂ギャラリーでの個展という貴重な機会を通じて、いろんなことを勉強させていただいたと思っていますが、一方で自分の未熟さも強く感じました。
この経験を活かして、立派なアーティストとして独り立ちし、再び資生堂ギャラリーで作品を披露できるようになりたいです。ありがとうございました。

審査実施報告

審査員
審査員

妹島和世(建築家)、辰野登恵子(画家)、藤本由紀夫(アーティスト)の3人の審査員は、3ヶ月にわたるshiseido art egg展開催期間中、実際に3つの個展に足を運び展覧会を鑑賞した上で、審査にのぞみました。当初、審査員がそれぞれshiseido art egg賞にと推した候補は三人三様に異なりましたが、各展覧会について意見交換を行い、十分な議論を重ねた結果、平野薫さんの展示が選ばれました。受賞者のみならず3つの展覧会すべてに対して、実際にクリエーションに携わる審査員ならではの視点が提示された3時間でした。

審査員

妹島和世(建築家)

妹島和世(建築家)

茨城県生まれ。1981年日本女子大学大学院修了後、伊東豊雄建築設計事務所勤務を経て、1987年妹島和世建築設計事務所設立。1995年~西沢立衛とSANAA設立。現在、慶應義塾大学教授。近作に、金沢21世紀美術館、トレド美術館ガラスパビリオン、直島町海の駅、現在、ニューミュージアム、ルーブル・ランス等のプロジェクトが進行中。(全て西沢立衛との共同設計)

辰野登恵子(画家)

辰野登恵子(画家)

長野県生まれ。1974年東京芸術大学大学院修了。1996年第46回芸術選奨文部大臣新人賞を受賞。「辰野登恵子1986-1995」(東京国立近代美術館、1995)などの個展のほか、国内の美術館で多くのグループ展に参加。資生堂ギャラリー第五次椿会メンバーとして2001年から2005年まで毎年「椿会展」に参加。現在多摩美術大学教授。

藤本由紀夫(アーティスト)

藤本由紀夫(アーティスト)

愛知県生まれ。1975年大阪芸術大学音楽学科卒業。80年代半ばよりサウンド・オブジェの制作を始める。近年の展覧会に「藤本由紀夫展―ここ、そして、そこ」(名古屋市美術館、2006)「藤本由紀夫展 ECHO-潜在的音響」(広島市現代美術館、2007)など。1997年から10年間毎年1日だけの展覧会を西宮市大谷記念美術館で開催するなど、ユニークな展覧会にも取組んでいる。

審査員所感

受賞者 平野薫展 《aerosol》
2007年1月12日~2月4日

平野薫展

友人が着用していたワンピースを糸の状態まで解体し、経糸、緯糸を元の配列のままつなぎ、資生堂ギャラリーの空間に再構築したインスタレーション作品。

人が着用していたワンピースを解体してギャラリーの空間に生まれ変わらせるというアイデアは、「つくらない」という点でファブリックを使用した手仕事とは全く違う立位置におり、とても斬新である。
ギャラリーの天井から針金ハンガー一つでパオのように吊り下げられ、空間一杯に広がる作品は、かつての着用者の化身のように感じられ、大変繊細ながら観るものを圧倒する力を秘めていた。

その反面、内部に入ることができる構造など、非常にパーソナルな色合いが濃厚すぎるようにも感じられた。こうしたパーソナルな意味合いの強い作品をパブリックなスペースに展開する工夫が必要ではないかという意見も出た。
また、小展示室に展示された作品制作に費やされた時間を記録したタイムカードは説明過多であった。ファブリックの美しさを引き出す平野さんがもっている本来の力を存分に発揮すれば、制作過程の時間の堆積は作品そのものがストレートに語ってくれたのではないだろうか。

しかし、全体としてアイデアとして面白い点、作品が持つ神秘的な魅力が評価され、第1回shiseido art egg賞に決定した。

水越香重子展 《DELIRIUM》
2007年2月9日~3月4日

ある建築空間(洋館)を舞台に象徴的なオブジェやキャストを登場させ、フィクションとして「曖昧な領域」そのものを表象する時空間をつくりだした新作映像《DELIRIUM》。リアルとバーチャルの境界の曖昧な感覚が、非常に澄みやかな美しいビジュアルによって丁寧に表現されていた。

水越香重子展
水越香重子展

シーツの上の歯や山羊の足、アリのリボンが燃えるシーンなど、様々なモチーフが面白く、各パーツの完成度も非常に高い。ただ、それを全体像としてどうまとめるかという点においては、さらなる構成力が必要と思えた。

作家自身の過去を振り返っているようなメランコリックさ、そして特に映像後半部でストーリー性が出てきてしまった点が、せっかくの映像に重い雰囲気を与えてしまったことが悔やまれる。
しかし、水越さんが今回の展覧会において、フィクションとしての作品づくり、CG使いなど、自分の世界を表現するための方法を模索し、失敗をおそれることなく新しい試みに果敢にチャレンジしていた点は高く評価したい。随所に発展の芽が見られ、観る者に今後の活動を期待させるところがあった。

内海聖史展 《色彩に入る》
2007年3月9日~4月1日

無数の色彩の点を敷き詰めるように描いた絵画で、資生堂ギャラリーの空間にアプローチ。
幅9m強、高さ5m強の壁面の寸法に合わせた大作1点、そして5cm×5cmの手のひらに乗るほど小さな作品の集積を、空間的に対峙する面に展開させた。
展覧会のタイトルは《色彩に入る》。

内海聖史展
内海聖史展

内海さんが単に作品を置いて鑑賞させるのではなく、「絵画を鑑賞する」ということがどういうことかについて深く考えているアーティストであることが、よく理解された。絵画を鑑賞するということは、展覧会のひとつのテーマとして非常に面白く、今回の展示にも、その内海さんの意識が強く反映されていたと思う。

ギャラリーの空間を綿密に分析した上でのインスタレーションとして今回の展示は成功しており、展覧会としてよくまとまっている。大展示室の絵画作品は、大画面として迫力もあり、ドットの集積や青の色彩が大変美しく、圧倒された。ただ、空間や展覧会をつくることに重きを置きすぎているきらいもある。抽象表現主義的な地と図の構図から一歩踏み出し、絵画として新しい表現にチャレンジしてくれることを期待したい。