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TOMOKO YONEDA BEYOND MEMORY AND UNCERTAINTY

「歴史」や「記憶」をテーマにした写真作品を制作するロンドン在住のアーティスト、米田知子の展覧会を開催いたします。本展では、米田が手がけるシリーズ「Topographical Analogy」「Between Visible and Invisible」「Scene」から、新作を中心に約20点展示いたします。

米田知子は、イリノイ大学シカゴ校、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートで写真を学び、1990年代の初めから作品を発表しはじめました。日本では1999年のVOCA展(上野の森美術館)、2001年の「Artists' debut」展(RICEギャラリー)、「手探りのキッス」展(東京都写真美術館、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館)などで作品を発表しており、海外では2002年にフランス・トゥールーズで行われた「Fragilités−Printemps de Septembre」、先ごろヒューストン美術館からクリーブランド美術館へ巡回した「History of Japanese Photography 1854‐2000」など、主要な写真展で紹介されています。

「Topographical Analogy」(トポグラフィカル・アナロジー)は、彼女が1996年から手がけているシリーズで、解体されてしまう住居の壁を撮影したものです。はがれかけた壁紙、ヒーターの煤の跡、ピンでとめられたキリストの絵、落書きなど、残されたものから、そこにかつて住んでいた人や営まれていた生活を感じ取ることができる作品です。「Between Visible and Invisible」(見えるものと見えないものの間)と題されたシリーズは、19世紀中期から20世紀に活躍した知識人が使っていた眼鏡を通して、その人の人生における重要な意味を持つ文章を撮影した作品です。我々は、まず作品を見てその人物が目にした情景を知る、そしてタイトルを読んでそれがどのような場面だったのかを理解し、またその場面にまつわるさまざまなドラマを想像するというように、何重もの読み方ができる作品です。例えば「トロツキーの眼鏡―未遂に終わった暗殺計画の際に燃やされた辞書を見る」という作品では、スターリンに追われメキシコに亡命したトロツキーが何度も暗殺未遂にあい、家に火炎瓶を投げ込まれて蔵書が焼けてしまったという事実、またトロツキーはディエゴ・リヴェラの招聘によってメキシコに亡命しましたが、ディエゴ・リヴェラ夫人だったフリーダ・カーロと恋愛関係に陥ってしまったことなど、作品タイトルの周辺にある人間模様やエモーションに思いをはせることができます。「Scene」のシリーズは、なにげない日常の風景が作家によって美しく切り取られたものですが、その風景は実は、世界大戦の戦場跡で何人もが血を流したなど悲しい傷跡を持つ場所です。「Scene」の作品も、ヴィジュアルにとどまらない奥に隠れた事実がタイトルによって浮き上がり、それによって作品の見え方がかわってくるものです。

展覧会のタイトルである「Beyond Memory and Uncertainty」は、記憶というのは不確実なものであり、記憶のなかで生きる歴史も不確実なものであるということを前提に、「記憶と不確実さの彼方にあるもの」についての問いかけを試みています。本展で紹介する作品は、歴史を再考察するという意味を持つと同時に、歴史にまつわる人々についても考えさせられるものです。そこで起こった事実を中心に、そのまわりのことにまで思いを巡らせることによって、様々なもの、そして未来へつながるなにかが見えてくるのではないか、という作家のメッセージが込められているように感じられます。

※トポグラフィカル・アナロジー=ある場所の詳細な描写、形状的な諸特徴とその構造的な関係の類比・同一性の意。


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