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Happy Trail

曽根裕、デーモン・マッカーシー、エリック・アラウェイの3人によるコラボレーション展「ハッピートレイル」を開催いたします。

本展は、それぞれ異なる職業を持ちながら、ともにプロ級のスキーヤーである3人が自分たちの手でスキーを作り、そのスキーを履いて実際に雪山を滑るまでを追うドキュメンタリー・プロジェクトです。真夏のギャラリーで、スキーを作ったワークショップの再現と、1年以上にわたる彼らのプロセスの記録映像を発表します。

本年のヴェニス・ビエンナーレ日本館代表となるなど多方面で活躍中の曽根裕は、2000年からロサンゼルスに生活の拠点を置き、以来、アメリカの西海岸を特徴づけるフリーウェイやビーチなどを作品のモチーフに取り上げてきました。現在、ロサンゼルス現代美術館の分館、The Geffen Contemporaryで発表している「Jungle Island」(7月27日まで開催中)は、熱帯植物で作り上げた人工ジャングルの中に、大理石で彫られたロサンゼルス郊外の高速道路を配置したもので、うっそうと茂る樹々の間を分け入ると、無数の車と人が行き交うもう一つの混沌とした世界(=ジャングル)に行き当たるという、二重の彷徨いを体感させるインスタレーションです。

また、季節を問わず海岸と雪山の両方に行けるというカリフォルニアの気候と風土に着目した曽根は、自身がUCLAで受け持った彫刻科の授業の中で、学生たちにスキーやサーフボードを制作させ、それらを一日のうちに使う様子を追ったビデオ作品「A Beautiful Day」を発表しました。今回の「ハッピートレイル」はそこから発展・拡大したプロジェクトで、スキーを通して出会った友人たちとともに、曽根が愛するスキーというスポーツを、既製の道具に頼ることなく丸ごと自分たちの身体で受け止め実現させる過程を、ビデオとインスタレーションで表現するものとなります。

映像ディレクターのデーモンと、小学校教師のエリックとともに、曽根が作ろうとしているスキーは、ベニヤ板をスキーの形状に切り抜くところからはじまり、それを何層にも重ねて手作りのプレスマシンで糊付けをするといった、試行錯誤の末に編み出された工程の中で出来上がる唯一無二のものです。新素材を駆使し、機能性のみならずファッション性への飽くなき追求が繰り返される今日のハイテク・スポーツギアとは対照的に、彼らのスキーはまったくのゼロからのものづくりであり、そこに純度の高い創造性を見出そうとしています。

しかしながら、スキーを一から作ることがそもそも不条理な行為であることは明らかで、3人が幾度の(ユーモラスでもあり、ドラマチックでもある)紆余曲折を乗り越えていく様子がビデオの中で展開します。そして、いつしか手作りのスキーで一気に雪山を滑り降りるという究極的な目的と、そこに至るまでのもどかしい道のり、それぞれに置かれた比重が逆転します。「ハッピートレイル」とは新雪の上に「楽しい痕跡(トレイル)を残すこと」ではなく、「楽しさを求めるための道のり(トレイル)」であるということがじわじわと浮き彫りになるのです。

曽根のパフォーマンス作品「19番目の彼女の足」は、構造上乗りこなすことが困難な連結された自転車を大勢が力を合わせて走らせようとする試みでした。それは、その難しさゆえに<前に進むこと>の意味や喜びを、いやがおうにも意識させる一つの装置でした。同様に「ハッピートレイル」も、無理や矛盾を孕んでいる目的を疑うことなく追求し、得難い喜びを求めようとする行為そのものを視覚化する試みだといえるでしょう。


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