過去の展覧会

life/art 04

従来の「美術」でも「工芸」でもない新たなジャンル。その可能性を2001年より問うてきたシリーズ企画展「life/art」(ライフ・スラッシュ・アート)も、今回でいよいよ最終回を迎えます。このシリーズでは、現代日本のアート界において個性的な作品で独自の地位を築いてきた5人の作家、今村源、金沢健一、須田悦弘、田中信行、中村政人の仕事を5年間定点観測してきました。フィナーレとなる今回は、美術と工芸あるいは生活と美術との関わりという「life/art」のメインテーマに対し、各人が自身の考えを順番に表明していくリレー個展を開催します。

一番手の今村源は、日用品に手を加え、彫刻と置物の間に位置するような独特の浮遊感が漂う造形を追求してきた作家です。最近「ものとものとの連続性に関心がある」と語る今村は、今回アルミのパイプを組み合わせた泡状のオブジェで会場全体を覆い尽くし、空間全体をダイナミックな作品にします。

今村 源(いまむら はじめ)プロフィール

1957年大阪生まれ。京都市立芸術大学大学院美術研究科修了。京都在住。ごく普通の日用品に手を加えて、何とも摩訶不思議なオブジェにつくり変える。京都と大阪の画廊を拠点にコンスタントに個展を開催する一方、近年は「きのうよりワクワクしてきた ブリコラージュ・アート・ナウ 日常の冒険者たち」(国立民族学博物館, 2005)「うたかたさんぽ 今村源とこどもたち」(京都芸術センター, 2005)などのワークショップを組み込んだ観客参加型展覧会にも積極的に取り組み、「日常生活」と「美術」との関わりを作品化している。

二番手の田中信行は、漆芸家として漆の塗装面の美しさを引き出すことと手指の動きによって生まれるフォルムを造形することに強い関心を抱いてきました。さらに「life/art」への参加を機に、彼の関心は「建築と関わること」へと広がりを見せるようになりました。今回は乾漆の技法を用いて、田中の今後の展開を予兆させるプレート状の作品と有機的なフォルムの作品を発表します。

田中信行(たなか のぶゆき)プロフィール

1959年東京生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科修了。現在、金沢美術工芸大学工芸科助教授。漆のもつ可能性を追求し、新たな「漆の場の創出」に取り組んでいる。近年は、自らが教鞭をとる金沢美術工芸大学内の和風建築でのインスタレーション(2003)、マントルピースのある海外のギャラリーでの個展(コウイチヤナギ オリエンタルファインアートギャラリー、ニューヨーク、2004)、ホテル建築とのコラボレーション(コンラッド東京、2005)など、多様な「場」での作品発表に意欲的に取り組む。

三番手の金沢健一は、金属を素材に造形活動を続ける作家で、一連の「音のかけら」シリーズにおいては実作品による演奏パフォーマンスにも力を入れています。今回は「音のかけら」を鉄板から切り出した後に残る、モザイク状の文様が美しい「音のぬけがら」を発表し、ライブ演奏も同時に開催します。また、昨年の今村との共同制作を機に生まれた映像作品の新作も公開します。

金沢健一(かなざわ けんいち)プロフィール

1956年東京都生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科修了。埼玉県在住。一貫して鉄を素材にした彫刻を制作。特に「音のかけら」シリーズは造形的に完成度の高い彫刻作品として視覚的に楽しめるだけでなく、「触れ」て音を出す、またその音を「聴く」など、人間のパフォーマンスと結びついたいわば体感型の彫刻作品として高い評価を得ている。近年は「金沢健一 響きの庭‐目で聴く音、耳で見る形‐」(慶応義塾大学日吉キャンパス)、「五感の都市へ 仙台芸術遊泳」(宮城県美術館)、など全国で作品発表、パフォーマンスを行っている。

四番手の中村政人は、理髪店やコンビニ、マクドナルドの看板などの社会的記号を題材としたり、「美術と教育」をめぐるフィールドワークを続けるなど、常に美術と社会、あるいは美術と教育との関わりを問うてきた作家です。今回は、中村にとって新しい表現手段となる絵画作品のいくつかを初公開する予定です。

中村政人(なかむら まさと)プロフィール

1963年秋田県生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科修了。「美術と社会」「美術と教育」との関わりをテーマに様ざまなアート・プロジェクトを進める社会派アーティスト。韓国(1990-1992)、香港(1997)への留学を経験、第49回ヴェネツィア・ビエンナーレでは日本代表作家として参加、国際的にも注目を集める(2002)。現在、アーティスト・イニシアティブ「コマンドN」を主宰。2003年からは、東京藝術大学絵画科助教授として実際に美術教育にも携わる。近年は、2005年8月に新たな活動拠点「KANDADA」(東京神田)を立上げたほか、日本にとどまらず留学以来ゆかりの深いアジア各国においても、アート・プロジェクトに関わっている。

そしてトリを務める須田悦弘は、このリレー個展という展覧会全体の鍵を握る「隠れた」リーダーでもあります。須田は繊細な木彫の花や枝を用いて空間に独特のアプローチを続ける作家です。今回は、天井高6m近くもあるギャラリーに数点の「椿の花」を配置するだけという、「なさそうであること」をコンセプトとしたインスタレーション。本作が「life/art '05」のフィナーレを飾ります。

須田悦弘(すだ よしひろ)プロフィール

1969年山梨県生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。自身が制作した繊細な木彫の花や枝をしつらい、空間に独特のアプローチを続けるアーティスト。1993年頃から活動を始め、国内外で作品発表を続ける。近年、パレ・ド・トーキョー(パリ、2004)やジ・アート・インスティテュート・オブ・シカゴ(2005)等で個展が相次いで開催されるなど、巧緻な木彫技術とオリジナリティの高いコンセプト・ワークの双方から生み出されるインスタレーション作品は、海外でも高い評価を受けている。

本展ほど、作家同士が話し合いを重ね、作品を批評しあい、切磋琢磨を繰り広げながら作り上げてきた展覧会は少ないに違いありません。展覧会の形態もそれに従い、大きく展開を遂げてきました。もともとはひとりがギャラリーの小展示室を個展会場として自由に使い、他の4人が大展示室を共有するという取り決めでスタート。'01では金沢が小展示室を使い、彼の「音のかけら」が発する音が会場全体に響き渡りました。しかし'02で中村がギャラリー内に本物の家を建てたときから、ひとりがイニシアチブをとり展覧会の方向性を決定するというやり方に移行してきました。田中の発案による「触れる」というテーマに基づく作品づくりに取り組んだ'03も、今村と他の4人が共同制作を試みた'04もこの延長線上にあります。

今回のリレー個展のアイデアもまた、これまでと同様、作家同士の度重なる話し合いの結果生まれてきたものです。最終回の今回、5人は「life/art」にどうアプローチするのでしょうか?是非それぞれの個展会場で各作家の報告をお確かめいただき、そして会場に「隠された」リレー個展ならではの仕掛けをお楽しみください。

■「life/art '05」開催概要

会期:
Part1 今村 源 2005年12月8日-12月25日
Part2 田中信行 2006年1月5日-1月22日
Part3 金沢健一 2006年1月26日-2月12日
Part4 中村政人 2006年2月16日-3月5日
Part5 須田悦弘 2006年3月9日-3月26日
会場: 資生堂ギャラリー
〒104-0061
東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
Tel:03-3572-3901 Fax:03-3572-3951
平日 11:00〜19:00 日曜・祝日 11:00〜18:00 毎週月曜休
入場無料

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