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2018年04月24日

発行元:(株)資生堂

研究・サプライネットワーク

資生堂、コレステロール合成酵素が肌の生まれ変わりに重要であることを発見

~ 再生医療のメカニズムに着目、初めて化粧品に応用へ ~

資生堂は、皮膚老化の改善を目的とした再生医療W-PRP施術※1に着目して、そのメカニズムを化粧品に応用する目的で医師との共同研究を進めてきました。このたび、コレステロール合成酵素DHCR7※2が正常な肌の生まれ変わり(表皮の分化)に重要な役割を果たしていることを明らかにし、さらにこの酵素を増加させる薬剤を新たに見出しました。これにより、美容医療と同じメカニズムに基づくスキンケアを自分で行えるようになります。

※1 W-PRP施術…美容医療、整形外科、歯科領域などで行われている再生医療であるPRP施術のひとつで、自分の血液の血小板及び白血球を含む画分(白血球含有多血小板血漿 / White blood cell containing platelet rich plasma)を肌に注射して組織再生を促す施術。自由診療であり、現在は「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」(平成26年11月施行)下で実施することが必要となっています。
※2 DHCR7…7-デヒドロコレステロール還元酵素。コレステロールを体内で合成するために必要な酵素。

W-PRP施術に着目

美容医療領域では目・口廻りにW-PRPを施術することにより皮膚状態が改善すると言われています。
資生堂は2009年に医師と共同でその効果や作用メカニズムの研究※3に着手し、ヒト皮膚の細胞で発現している遺伝子約20,000個をDNAマイクロアレイ※4を用いて網羅的に解析しました。その結果、W-PRP施術によりコレステロール合成酵素DHCR7遺伝子の発現が増加することを発見し(図1)、表皮でコレステロール合成酵素DHCR7が多く産生されていることを確認しました(図2)。さらに、ヒト培養表皮角化細胞でコレステロール合成酵素DHCR7の働きを阻害すると分化が抑制されたことから、表皮の分化にはコレステロール合成が重要であることを明らかにしました(図3)※5。

※3 日本美容皮膚科学会で学会賞(優秀演題賞)を2年続けて受賞(2010年、2011年)
※4 DNAマイクロアレイ…細胞内の遺伝子発現量を比較するために、多数のDNA断片をスライドガラス等の基板上に高密度に配置したもの
※5 2013年日本美容皮膚科学会で発表

図1 W-PRP施術によりDHCR7遺伝子発現量が増加 (DNAマイクロアレイ、ヒト皮膚、2例)

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図2 W-PRP施術によるコレステロール合成酵素DHCR7タンパク発現量の変化(ヒト皮膚、酵素を茶色で染色)

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図3 ヒト培養表皮角化細胞でコレステロール合成酵素DHCR7の働きを(左)阻害しないと分化が抑制されない (右)阻害すると分化が抑制される

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同じ作用メカニズムを持つ薬剤の発見

ヒト培養表皮角化細胞を用いてコレステロール合成酵素DHCR7遺伝子の発現を増加させる薬剤を探索した結果、酢酸レチノール※6がDHCR7遺伝子の発現を増加させることを発見しました(図4)。今後、酢酸レチノールを新たなスキンケア化粧品の開発に応用する予定です。
※6 酢酸レチノール・・・ビタミンA誘導体の一つ。ビタミンAアセテート、レチノールアセテートともいい、保湿クリームなどの化粧品成分としてすでに使用されています。

図4 DHCR7遺伝子発現に対する酢酸レチノールの効果 (ヒト培養表皮角化細胞)

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※このリリースに記載されている内容は発表時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご留意ください。