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研究開発
Innovation

1999年度

第98回日本皮膚科学会 ランチョンセミナー

「スキンケア~敏感肌にせまる~」

開催年月 :
1999年4月
共催 :
日本皮膚科学会・資生堂

概要

1)開催にあたって

宮地 良樹氏(京都大学大学院 医学研究科 皮膚病態学 教授)

2)敏感肌とは

宮地 良樹氏(京都大学大学院 医学研究科 皮膚病態学 教授)

3)敏感肌のスキンケア

田上 八朗氏(東北大学 医学部 皮膚科 教授)

4)敏感肌の化粧指導

松永 佳世子氏(藤田保健衛生大学 医学部 皮膚科 講師)

5)関連文献


開催にあたって

宮地 良樹氏(京都大学大学院 医学研究科 皮膚病態学 教授)

宮地 良樹氏 PHOTO

スキンケアという言葉が皮膚科学で市民権を得て久しいが、いまやスキンケアはアトピー性皮膚炎やざ瘡などの日常的にありふれた皮膚疾患の予防や寛解維持に欠かせないツールとなった。スキンケアは皮膚の生理も病理も知り尽くした皮膚科医が実地臨床の場で主体的に参画すべきであり、したがって皮膚科医の重要なスペシャリティーのひとつとなるべきである。

今回は皮膚科学的に定義はないものの、香粧品ユーザーや皮膚疾患を有する患者を中心に広く用いられている「敏感肌」を取り上げることにした。このような学術的でない用語を議論することにはご批判もあろうが、現実的に日常診療の中で患者を前に戸惑うばかりでは混迷を助長するだけである。患者との意思疎通を図り、整合性のあるスキンケアを啓蒙するために「敏感肌」を考えることは意義深いと思われる。

「敏感肌」はドライスキンなどを背景に被刺激性の亢進した皮膚と考えるのが妥当と思われるが、アンケート調査によれば、一般の人々は「トラブルを起こしやすい皮膚」とほぼ同義に拡大解釈しており、したがって約30-40%が自らを「敏感肌」と考えているという。この結果は現時点で「敏感肌」のコンセプトに対する皮膚科医の一定のコンセンサスを得ることの重要性を示唆しているものと思われる。今後、低刺激、低アレルギー化粧品を含めた基礎化粧品、サンスクリーンや美白剤などの機能性化粧品、洗浄剤を含むトイレタリーなどをニーズに応じて皮膚科の臨床で指導する際に「敏感肌」はキーワードになろう。

本セミナーでは、皮膚科学的な見地から「敏感肌」を論じたあと、田上先生にはアトピー性皮膚炎を中心とした「敏感肌」のスキンケアの実際について、松永先生には「敏感肌」を有する患者や接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎患者に対する化粧指導についてお話しいただく予定である。曖昧な「敏感肌」の概念がいささかでも整理され、明日からの日常診療のお役に立てば幸いである。


敏感肌とは

宮地 良樹氏(京都大学大学院 医学研究科 皮膚病態学 教授)

宮地 良樹氏 PHOTO

「敏感肌」は皮膚科学術用語ではない。しかし、香粧品ユーザーを中心に巷間ありふれて使用され、したがって皮膚科外来においても、しばしば語られているはずである。低刺激、低アレルギーなどが市民権を得たキーワードとなった現在、皮膚科医の観点から「敏感肌」を考える意義は十分あると思われる。

一般的に「敏感肌」は、ドライスキンによる皮膚バリア機能の破綻を背景に外界からの刺激に対する耐用性が低下し、一次刺激性あるいはアレルギー性接触皮膚炎を起こしやすい肌質と考えるのが妥当であろう。この中にはアトピックドライスキン、一部の光線過敏症なども包含されるものと解釈される。場合によっては酒さ様皮膚炎、stinging(ヒリヒリ感)などを含むこともあろう。しかし、一般の人々の中には、ざ瘡や脂性肌までも含めた肌のトラブルをすべて「敏感肌」と考えるむきもあり、調査によっては30-40%の人が自らを「敏感肌」と捉えている。したがって、「化粧品や洗浄剤によりかぶれたりヒリヒリ感がある」「紫外線を浴びると皮膚炎症が起こる」「季節の変わり目に肌荒れしやすい」「かみそりなどの刺激に弱い」などと表現されることが多い。主として顔面の肌の違和感を主観的に訴える香粧品ユーザーと皮膚科を受診する患者との間には「敏感肌」をめぐる認識の差もあるが、少なくとも皮膚科医と患者との間の誤解は好ましくない。その乖離を解消するためには、患者が「敏感肌」をどのように捉えているかを熟知し、その背景に潜む皮膚疾患の病態を理解した上で、日常診療の場で、患者に対する整合性のある説明をすることが求められる。本セミナーでは、皮膚科医と患者との意思の疎通を図るべく「敏感肌」を皮膚科学の立場からあえて定義したうえで、整合性のあるスキンケアがどうあるべきか、また「敏感肌」を有する患者や接触皮膚炎あるいは光線過敏症略治後、さらには寛解期にあるアトピー性皮膚炎患者に対する化粧指導の実際について考えてみたい。


敏感肌のスキンケア

田上 八朗氏(東北大学 医学部 皮膚科 教授)

田上 八朗氏 PHOTO

化粧をしない子供や男性は別として、日常、顔に化粧をする女性を対象としたアンケート結果を見るかぎりでは、洋の東西を問わず、自分の皮膚が敏感肌であると答える人の割合は三割近くから、多いものでは五割を越えるものもある。要するにかなり多くの成人女性が自分は敏感肌をしていると感じているのである。とくに、その中でも、ひどいと感ずる人ほどアトピー性皮膚炎の既往をもつひとの占める割合が多くなる。すなわち、敏感肌と感じさせる大きな要素としては皮膚表面の角層の機能低下が当然、予想される。

角層の二つの重要な機能として、物質透過のバリアとして働くことと、水分を保持し皮膚の表面に柔らかさや滑らかさを与えることとが挙げられる。アトピー性皮膚炎患者の炎症のない、ただ乾燥した皮膚は一見正常に見えても、角層のバリア機能の低下、あるいは水分保持機能の低下が認められる。そのため、乾燥した環境では、皮膚の表面の角層が乾燥して固くなり、あさい亀裂や細かい鱗屑を生じやすい。

このようなアトピー性乾皮症の皮膚で調べてみると、バリア機能に重要な角層細胞間脂質のセラミドや、天然保湿因子であるアミノ酸の低下が角層に認められる。さらに、これは表皮の代謝異常すなわち、角層のターンオーバーの亢進を背景にしており、目にはみえないが、軽い皮膚炎が存在するためと考えられる。全く正常にみえる患者の非病変部皮膚では、このような異常は証明できなくなる。

アトピー性乾皮症では、わずかな刺激によっても、そのわずかな皮膚炎が増悪をおこし、持続しやすい。すなわち、ケブネル現象を生じやすいといってよい。角層の異常は皮膚炎の患者だけでなく、花粉症の患者においても認められる。花粉症の時期にその前腕皮膚で測定してみると、角層の水分保持機能の低下、角層アミノ酸量に低下があり、当然、その時期においては敏感肌予備軍であることを示唆する結果が得られる。

敏感肌に対するスキンケアは当然これら低下した角層の働きをよくすることに向けられるべきである。とくに、角層の表面にひび割れを生じないよう、保湿剤の外用が望まれる。保湿外用剤の効果は塗布したあとの一時的なものだけでなく、もし、繰り返し毎日塗布していると、次第に効果は持続するようになるため、気がついたときだけでなく、日々の手入れをするように指導することも大切である。


敏感肌の化粧指導

松永 佳世子氏(藤田保健衛生大学 医学部 皮膚科 講師)

松永 佳世子氏 PHOTO

「敏感肌の化粧指導」をここでは「敏感肌の人に、顔面皮膚、口唇、頭皮と毛髪・爪の状態に合わせて、スキンケアとメークアップの仕方を皮膚科医が適切にアドバイスすること」と定義させていただきたい。

ところで、最近では茶髪や金髪の日本人が増え、眉の化粧も注目を集め、化粧をはじめる年齢も低下している。個性を表現する(でも皆似て見えるが)手段として、化粧は女性は勿論、男性にとっても今や日常欠かせない行為になっている。 敏感肌の人も自分自身を魅力的にみせる化粧をしたい願望は同じである。「そんなの無理よ」と簡単に拒否せず、その時々にできる適切な化粧指導を行っていけるのはわれわれ皮膚科医をおいて他にない。

そのためには(1)肌(皮膚)の状態を正しく診断し、(2)炎症のある場合は原因を明らかにし、(3)治療し、(4)使用できる化粧品を選択し、(5)使用方法を指導する。

肌を正しく診断するには視診・触診の他に種々の機器計測も有用である。炎症の原因を明らかにし、使用できる化粧品を選択する手段としてはパッチテストと肘窩に繰り返し塗布する試験を行う。肌に合った化粧品を選択するためには化粧品の特性(脱脂力、保湿効果、落としやすさ、紫外線防御効果、美白効果など)と安全性についての知識が必要である。

以上の観点から、敏感肌の代表例と考えられる化粧品皮膚炎、アトピー性皮膚炎、ステロイド皮膚症、そして一般の方では敏感肌と考えているアクネの症例について、私の行っている化粧指導のポイントを述べる。


関連文献

  1. 1.宮地 良樹(著):知的なスキンケアQ&A、ミネルヴァ書房、京都、1994
  2. 2.宮地 良樹(編著):皮膚の老化と活性酸素フリーラジカル、フレングランスジャーナル社、1996
  3. 3.宮地 良樹(編著):臨床医のためのスキンケア入門、先端医学社、1997
  4. 4.本田 光芳、漆畑 修、宮地 良樹(編著):美容皮膚科学、南山堂、印刷中
  5. 5.松永 佳世子:ざそうのスキンケア、皮膚病診療 15: 673-676、1993
  6. 6.光井 武夫(編著):新化粧品学、南山堂、東京、1993
  7. 7.藤沢 有紀、松永 佳世子:皮膚科医よりみた皮膚の洗浄とその安全性、フレグランスジャーナル 1996-7: 9-16、1996
  8. 8.松永 佳世子:化粧品皮膚障害について、Aesthet Dermal 6: 37-40、1996
  9. 9.勝村 芳雄:低刺激性・低アレルギー性化粧品の研究開発の現状と課題、フレグランスジャーナル 1994-8: 25-34、1994
  10. 10.高橋 元次:アトピー性皮膚炎のスキンケア -ドライスキンの特長とそのケア-、香粧会誌 Vol.21 No.1: 50-55、1997
  11. 11.菅原 信:アトピー性皮膚炎以外の敏感肌、香粧会誌 Vol.21 No.2: 121-124、1997
  12. 12.Tagami H: Quantitative mesurements of water concentration of the stratum corneum in vivo by high-frequency current. Acta Derm Venereol(Stockh) Suppl 185:29-33, 1994
  13. 13.Watanabe M et al: Functional analyses of the superficial stratum corneum in atopic xerosis. Arch Dermatol 137:1689-1692, 1991
  14. 14.Tagami H, Parrish JA, Ozawa T: Skin, interface of a living system: Perspective for skin care system in the future, Elsevier, 1998
  15. 15.田上 八朗: 皮膚のバリアとしての角層, 日皮会誌108: 713-727, 1998
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