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研究開発
Innovation

2001年度

第100回日本皮膚科学会総会 イブニングセミナー

「スキンケア~ストレスと敏感肌~」

開催年月 :
2001年4月
共催 :
第100回日本皮膚科学会総会・資生堂

概要

1)コーディネーターから

宮地 良樹氏(京都大学大学院 医学研究科 皮膚病態学 教授)

2)講演I
「環境ストレスと角層機能」

~顔面皮膚は敏感肌と言えるのか?~
田上 八朗氏(東北大学 医学部皮膚科 教授)

3)講演II
「メンタルストレスと角層機能」

~メンタルケアは皮膚バリアー機能を改善させるか~
傳田 光洋(資生堂 ライフサイエンス研究センター)


コーディネーターから

宮地 良樹氏(京都大学大学院 医学研究科 皮膚病態学 教授)

宮地 良樹氏 PHOTO

1999年の本学会でのセミナー「スキンケア~敏感肌にせまる~」において、皮膚科医が考える「敏感肌」の第一要因は「角層バリアー機能の低下」であることを明らかにするとともに、この「敏感肌」というキーワードが市民権を得た皮膚科用語として認知されるべきであると提唱した。

スキンケアセミナーの第二弾として、今回はストレスと角層機能に焦点を合わせて論じていただくことにした。アトピー性皮膚炎や乾癬を想起するまでもなく、メンタルストレスや環境ストレスが皮膚の恒常性や皮膚疾患に大きな影を落としていることは想像に難くない。しかし、これまで皮膚科医はこの方面からのアプローチに消極的であったといわざるを得ない。しかしストレス社会の渦中にある現代人の皮膚の健康を考える上で、ストレスの視点から皮膚を検証することは必須の課題であろう。

そこでまず、田上教授には、もっとも過酷な環境ストレスに曝露されている顔面皮膚がいかに炎症を惹起しやすい状態にあるか、またこのような特異な性質を有する顔面皮膚をスキンケアによりいかにコントロールすべきかを豊富なデータをもとに明快に解説していただくことにした。

次いで、資生堂の傳田氏には、メンタルストレスによっても角層機能が大きな影響を受けること、トランキライザーや鎮静効果のある香料によってこれらの角層機能が回復することをご報告いただき、トータルなスキンマネージメントの一環としていかにメンタルケアが重要であるかをご指摘いただく予定である。

このような議論を深める中から、外界と生体のインターフェイスにある皮膚臓器を、情動や環境に感応するストレス標的臓器として捉え直すことで皮膚科医に新たな視界を切り拓く機会になれば幸いである。


講演I
「環境ストレスと角層機能」
~顔面皮膚は敏感肌と言えるのか?~

田上 八朗氏(東北大学 医学部皮膚科 教授))

田上 八朗氏 PHOTO

皮膚を覆うバリアー膜の角層は生体由来の膜であるため、蛋白や脂質を破壊する環境からの化学的ストレスにこそ弱いが、環境からの物理的ストレス(温熱、寒冷、紫外線、放射線)にさらされても、ほとんど影響は受けない。しかし、そのすぐ下にある生体皮膚組織は気候など環境の影響を受けて変化を示すため、それは角層のバリアー機能や水分保持機能に反映しうる。たとえば、気温が低く乾燥した冬には、湿った夏に比べ角層のバリアー機能の低下があり、皮膚の被刺激性も高くなりうる。

さて、敏感肌の訴えは顔面に集中する。調べてみると、顔面は体の中でも角層の薄い皮膚の筆頭であり、しかも角層が不完全でバリアー機能の低い皮膚付属器が占める面積も大きい。調べてみると、同じく附属器の多い頭部の皮膚に比較しても、そのバリアー機能は有意に低く、むしろ他の部位に生じた皮膚炎の病変部に匹敵するものでしかない。それでいて、つねに環境に露出しているため、当然、環境ストレスには敏感であることが予想される。

一般に、正常の角層には表皮由来の起炎性サイトカインであるIL-1αが大量に含まれるが、炎症がある部位の角層では、このIL-1αの働きをブロックするIL-1 receptor antagonist (RA)が表皮で盛んに造られ、その角層内での含有量が多くなる。顔面皮膚は体の中で唯一IL-lRA/IL-1αの比率が高いという炎症性病変の角層の様相を呈する。また角層のターンオーバーも速やかで、それを反映するかのように、角層細胞の構成成分であるcornified envelopeの未熟性も目立つ。さらに真皮の血流も良いなどの点から、すでに軽い炎症性皮膚の性質を有していると見れば理解しやすい。新生児皮膚では、これらの変化が少ないことより、環境ストレスがこれらを起こしている可能性は否定できない。

以上の点から、顔面のスキンケアは皮膚組織への環境ストレスの影響の特異性を考慮にいれて、なされるべきであろう。


講演II
「メンタルストレスと角層機能」
~メンタルケアは皮膚バリアー機能を改善させるか~

傳田 光洋氏(資生堂 ライフサイエンス研究センター)

傳田 光洋氏 PHOTO

心理的ストレスがアトピー性皮膚炎、乾癬などを悪化させることについては、多くの疫学的報告がなされている。また、これらの疾患には皮膚バリアー機能の低下が認められる。バリアー機能の低下は、それが軽度であっても、ダメージをくり返し受けたり、環境湿度が低下している状況下では顕著な表皮増殖性異常や炎症を惹起する。またダメージを受けたバリアーの回復促進が、それらの炎症性の変化を抑制することも知られている。そこで本講演では、情動性ストレスと皮膚バリアー回復能との関連について今までの知見を紹介する。そしてメンタルケアによって角質層バリアー機能を向上させる可能性についても言及したい。

ヘアレスマウスの飼育容器を交換すると、環境変化によって血中コルチコステロンの量が上昇し、情動性ストレスを受けていることが確認される。この際、角質層をテープストリッピング処理した後のバリアー回復を評価した結果、環境の変化が無かった群に対して、バリアーの回復が遅延することが認められた。飼育容器交換前のトランキライザー (Chlorpromazine) 投与は、この環境変化によるコルチコステロンの上昇を抑制し、バリアー回復速度の遅延を抑制した。グルココルチコイドレセプターアンタゴニスト(RU- 486)の投与も、環境変化ストレスによるバリアー回復遅延を抑制した。さらにdimethoxymethylbenzene (DMMB)など、鎮静効果がある香料を環境変化の前に吸入させても、ストレスに伴う皮膚バリアー回復遅延を抑制する効果が認められた。

ヒトにおいては、長時間安定な心理ストレスをかけられるcolor-word Stroop testによってストレスを負荷した。この心理ストレス負荷によっても皮膚バリアーの回復が遅延する傾向が認められた。この際、DMMBを含む香料を吸入させるとバリアーの遅延が抑制された。このDMMBは、脳波計測(随伴性陰性変動)によって、被検者の意識水準に対して鎮静的に働くことも実証された。

これらの結果は心理的因子が皮膚バリアー機能に影響を及ぼすこと、それに対する嗅覚刺激などによるメンタルケアの有効性を示唆している。

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