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皮膚科学

100年超の研究開発の歴史の中で、私たち資生堂は、たるみ、シワ、シミ・くすみといった、お客さまの不変の肌悩みと向き合い続け、観察技術を進化させるとともに、その要因の解明やソリューション開発に取り組んできました。また、近年では、血管、リンパ管、免疫、神経など、肌の内部の状態にも着目し、肌状態との関連などについて研究を深めています。

皮膚の「たるみ」に関する研究

加齢による顔かたちの変化「たるみ」についての知見を、資生堂は本研究領域のパイオニアとして次々と明らかにしてきました。その成果は、IFSCC主催の国際的な研究発表会においても、4大会連続の最優秀賞受賞など、高く評価されています。

  • IFSCC:The International Federation of Societies of Cosmetic Chemists、国際化粧品技術者会連盟

資生堂、皮膚の抗重力システム「ダイナミックベルト™」を発見

見た目の老化の原因となる「たるみ」の原因を解明。皮膚が重力による変形に抵抗するシステム「ダイナミックベルト™」を発見しました。「ダイナミックベルト™」は、顔面に高密度に存在する立毛筋群が重力に抵抗する仕組みです。

ダイナミックベルト

高密度で配向する顔面の立毛筋

真皮の細胞が織りなす『線維芽細胞ネットワーク』を解明

真皮の細胞(線維芽細胞)が微細な突起で互いに結合し、ネットワーク構造を形成していることを明らかにしました。また、この『線維芽細胞ネットワーク』が失われることで、細胞の状態が悪化し、皮膚の老化に繋がる可能性を示しました。

真皮の線維芽細胞ネットワーク

真皮の線維芽細胞ネットワーク

加齢に伴う真皮空洞化のメカニズムを解明

真皮が空洞化している部位では汗を分泌する器官「汗腺」が著しく委縮していることを世界で初めて発見しました。汗腺の委縮が真皮空洞化の鍵であることを解明した本知見を基に、新たなスキンケアへの応用を目指します。

加齢に伴う汗腺位置の上昇と真皮の空洞化

加齢に伴う汗腺位置の上昇と真皮の空洞化

世界で初めて顔の形状を支える肌構造を解明

顔の形状を保持する肌構造を世界で初めて解明し、「アンカー構造」と名付けました。「アンカー構造」が加齢によって失われることで、顔の形状を支えきれなくなり、顔がたるむことを発見しました。

顔の肌に特徴的なアンカー構造

顔の肌に特徴的なアンカー構造
左(体の肌):肌の各組織が 平たく層状に積み重なっている
右(顔の肌):真皮下部に 突起状の構造体があり、「アンカー構造」と名付けた

皮膚の「シワ」に関する研究

シワの根本原因に迫るとともに、レチノール類で日本で唯一、「しわを改善する」効能効果の承認を得ている「純粋レチノール」を資生堂のシワ改善の代表技術として、ソリューション研究を深化させています。

有効成分純粋レチノールによるしわを改善する効能効果の承認を日本で初めて取得

純粋レチノールのしわ改善技術は約30年間にわたる資生堂の研究成果です。この基盤技術のもと、日本で唯一、医薬部外品の有効成分純粋レチノールを配合した製品を製造販売できるメーカーとして、アンチエイジング(抗老化)領域の研究を進めています。

3次元画像解析によるしわ改善効果代表例

3次元画像解析によるしわ改善効果代表例

シワの根源は肌内部の弾性バランスにあることを発見

最先端技術、肌内外3D弾性イメージング技術の開発により、若年層からマチュア層まで幅広いお客さまの肌弾性率を解析したところ、加齢にともなって「角層と真皮層の間で生じる弾性バランス」の崩れが生じており、この現象がシワの本質であることを発見しました。

肌の中で発生する角層と真皮層の弾性率のかい離

肌の中で発生する角層と真皮層の弾性率
のかい離

皮膚の「シミ・くすみ」に関する研究

シミやくすみなどが発生するメカニズムに迫るとともに、資生堂が独自に開発した美白有効成分「4-メトキシサリチル酸カリウム塩」や「トラネキサム酸」から、さまざまな植物抽出物類まで、幅広いソリューション成分の開発に取り組んでいます。

細胞接着分子E-カドヘリンがシミの発生・定着に関与することを発見

細胞同士を接着させる分子であるE-カドヘリンがシミ部位で減少していることを発見し、E-カドヘリン減少環境下にあるメラノサイトの動きを3次元かつリアルタイムに解析すること(4D動的解析)に成功しました。

ヒト皮膚におけるシミ部位のE-カドヘリンの減少

ヒト皮膚におけるシミ部位のE-カドヘリン
の減少

血管を介したシミ形成に繋がる新たな要因を確認

シミ部位ではウロキナーゼ※1の活性が高まることを発見しました。また、ウロキナーゼは、紫外線ダメージにより血管内皮細胞※2から分泌され、メラニン生成促進に関与することを確認しました。

  • 1:生体に存在する酵素の1種で、活性が高まると肌あれのきっかけとなることが知られていました。
  • 2:毛細血管を構成する主な細胞の1種。

ウロキナーゼ活性の比較

ウロキナーゼ活性の比較

最先端のエピジェネティクス研究で光老化により肌がくすみやすくなる原因の一端を解明

光老化などの影響により後天遺伝学的(エピジェネティック)に肌がくすみやすくなるメカニズムの一端を解明しました。

  • 太陽光に含まれる紫外線によって生じる「シミ・シワ」などの肌の老化現象のこと。肌老化の主要な原因とされています。

紫外線があたる部位では「TIPARP」の発現が減少する

紫外線があたる部位では「TIPARP」の発現が
減少する

皮膚の「血管・リンパ管・免疫・神経」に関する研究

肌内部に存在し、全身と肌をつなぐ役割も果たす、血管、リンパ管、免疫、神経などについて、非侵襲でその状態を観察する技術も開発しながら、肌の美しさとの関連を明らかにしています。

触感を司るメルケル細胞が香り成分で活性化することを発見

触覚を担うメルケル細胞に香り受容体が発現していることを発見し、サンダルウッド様の香りを持つ香り成分により香り受容体が活性化することを、ヒト皮膚培養系を用いた実験により証明しました。

多光子顕微鏡により観察したメルケル細胞と神経線維

多光子顕微鏡により観察したメルケル細胞と神経線維

毛細血管が肌の弾力を生み出すメカニズムを解明

毛細血管が肌の弾力を生み出すメカニズムを解明し、加齢や紫外線などのダメージで細く衰える毛細血管を太く丈夫な状態に保つためにニーム葉抽出液やドクダミ抽出液が有効であることを発見しました。

毛細血管上の弾力センサーAPJ

毛細血管上の弾力センサーAPJ

世界で初めて皮膚のリンパ管の老化メカニズムを解明

独自に開発した皮膚可視化技術を活用することにより、皮膚のリンパ管の老化メカニズムを世界で初めて解明しました。

  • 資生堂、リンパ管を立体的に捉える可視化技術を確立(2020年)

本研究の全体像

本研究の全体像

マクロファージのバランスの崩れに表皮由来のIL-34の減少が関与することを発見

これまで皮膚老化やコラーゲン代謝との関わりを明らかにしてきたM1マクロファージとM2マクロファージのバランス(M1/M2バランス)の崩れに、表皮由来のIL-34(インターロイキン34)というタンパク質の減少が関与することを新たに発見しました。

マクロファージのバランスの崩れに表皮由来のIL-34の減少が関与することを発見

老化によるマクロファージのバランスの崩れがコラーゲン代謝に影響することを発見

光老化した皮膚において、2種類のマクロファージ※1のバランス(M1/M2バランス)が、コラーゲンの産生や分解、除去など、一連のコラーゲン代謝に関与していることを明らかにしました。

  • ※1:細菌や老廃物を取り込み処理することを主な機能とする免疫細胞の一種。M1マクロファージは主に炎症反応を担い、外敵などを排除し、M2マクロファージは抗炎症反応や、炎症により傷ついた組織などの修復を促す

コラーゲン繊維形成にマクロファージM1の培養上清が与える影響(青:繊維芽細胞の核、緑:Ⅰ型コラーゲン)

コラーゲン繊維形成にマクロファージM1の培養上清が与える影響(青:繊維芽細胞の核、緑:Ⅰ型コラーゲン)

加齢による皮膚免疫力変化のメカニズムの一端を解明

加齢した皮膚では真皮中のランゲルハンス細胞※2の前駆細胞※3(以下、LC前駆細胞)が減少するとともに、LC前駆細胞を表皮に誘引する因子の産生が低下することにより、成熟したランゲルハンス細胞の減少を引き起こしていることを発見しました。

  • ※2:ランゲルハンス細胞…骨髄で造られる樹状細胞で、表皮で網目状のネットワークを形成するように存在している(ランゲルハンス細胞は表皮全体の細胞数の2~5%)。1886年に発見した医学者パウル・ランゲルハンスにちなんで名づけられている。
  • ※3:前駆細胞…幹細胞から特定の細胞へ分化する途中段階の細胞。真皮に存在するLC前駆細胞は、表皮に移動して分化すると、正常なランゲルハンス細胞として免疫機能を発現する。

今回の研究で示唆された加齢によるランゲルハンス細胞の減少メカニズム

今回の研究で示唆された加齢によるランゲルハンス細胞の減少メカニズム